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2019年バックナンバー

雑記帳

弁護士の権力からの独立

 一般に、いわゆる「士業」(弁護士、公認会計士、税理士、弁理士、不動産鑑定士、土地家屋調査士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)には、すべて監督官庁があると誤解されておられる方がおられないでしょうか。

 

 弁護士だけが、監督官庁がないのです。

 

 法務省でも最高裁でもありません。現在の日本で、監督官庁のないのは、国会、内閣、裁判所と、あと弁護士会くらいではないでしょうか。

 

 なぜ、弁護士には、監督官庁がないのでしょうか。
 理由は、権力からの完全な独立がないと、弁護士の使命である「基本的人権の擁護」と「正義の実現」が保持できません。それを避けるためです。

 

 仮に、法務大臣や最高裁判所が、弁護士の懲戒権を持てば、弁護士は、懲戒を恐れて、検察官や裁判所と対等な立場で、「基本的人権の擁護」と「正義の実現」ができなくなる可能性があります。

 

 他の「士業」には、権力からの完全な独立の必要はありませんから、監督官庁があります。ただし、公認会計士は別格で、懲戒は内閣総理大臣がおこないます。普通は大臣クラスです。司法書士クラスのレベルにまで下がると、大臣でもなく、各地の法務局長です。

 

 弁護士に監督官庁がないということは、弁護士の懲戒は、弁護士会自身がすることになります。

 

 弁護士の懲戒は、各単位会(たとえば、大阪弁護士会)の綱紀委員会の議決、懲戒委員会の議決によりますが、綱紀委員会と懲戒委員会の委員の構成は、弁護士、裁判官、検察官及び学識経験者と弁護士以外からの委員を加え、より一層公正な審査、判断がなされるように配慮されています。

 

 「身内に甘いのでは?」と思われるかもしれません。もちろん事案により、一概にはいえませんが、現実に担当している者の実感として(私は綱紀委員会委員をしていました)、「身内だから厳しい」と思うことがあります。

 

 東京や大阪の弁護士会ならば、綱紀・懲戒委員会、それをささえる事務局など、事務処理体制に問題はないのですが、小規模単位会に、事務処理能力をこえた懲戒の申立てが集中すると、事務のマヒは確実で、他の案件の処理ができなくなる可能性があることだけは間違いありません。

 

 昨年の朝鮮学校の無償化についてのいくつかの単位弁護士会会長の声明を起因とし、多数の懲戒請求がなされました。

 

 大阪弁護士会は、賢明にも声明を出しませんから問題なかったのですが、小さい単位会は大変だったと思います。

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