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2019年バックナンバー

雑記帳

ISD条項が必要な国

 平成30年6月7日、大宇エレクトロニクスの売却過程が不正であるとして、イランのダヤニグループが、韓国政府を相手に起こした投資家対国家間紛争解決手続(ISD。Investor-State Dispute Settlement)で、韓国政府に約730億ウォン(当時のレートで約73億円強)の支払いを命じる判決が下されました。
 
 韓国の裁判所で請求が棄却されたので、ISD条項に基づき、韓国政府を提訴していました。
 韓国の裁判所の判決が不当であるとの判決です。
 
 韓国政府は、あきらめが悪く、合意管轄に基づき、イギリスの高等裁判所に判決の取消しを求めていた上訴をしていました。
 
 令和元年12月23日、韓国政府が、合意管轄に基づき、イギリスの高等裁判所に判決の取消しを求めていた上訴が棄却され、確定しました。
 
 
 ダヤニグループは、イランの家電メーカー「エンテックハブ」を所有しており、平成22年に大宇エレクトロニクスの買収をめぐって優先交渉対象者に選ばれたのですが、その後債権団から契約を解除されました。
 
 ダヤニグループは、この過程で韓国政府による違法な介入があったとしてISDに仲裁の申立をして、仲裁裁判所は、韓国政府に対し、ダヤニファミリーに730億ウォンを返還するよう命じました。
 
 平成31年2月、イランのダヤニグループは、韓国政府を相手取って起こしたISDに資産仮差押さえの申立てをしています。
 仮差押さえの対象は、オランダに進出している韓国企業が韓国政府に対して負っている債務です。
 対象企業はサムスン、LG、ウリ銀行、ハナ銀行などとされています。
 
 
 ISD条項とは、投資受入国の協定違反によって投資家が受けた損害を、金銭等により賠償する手続を定めた条項です。
 国際的な投資関連協定でこれを規定する条項は「ISD条項」と呼ばれます。
 これまで日本は25以上の国と投資協定を結んでその中に既にISD条項は入っています。
 しかし、日本政府に対する訴訟は1件もありません。
 
 ISD条項で訴えられている国は国内法整備が不備の途上国ばかりで日本は関係ないという学者もいます。
 
 本当のところはよくわかりません。
 
 ただ、間違いのないことは、韓国の裁判所の判決が、国際法に照らして誤りであると判断されたことです。
 
 さらに、アメリカのローンスター、エリオット、さらに、スイスの会社シンドラー(エレベーターで有名です)が、韓国政府に対し、ISD条項に基づき法的手続きをとっています。
 
 エリオットについては、現ムンジェイン政権が、パククネ前大統領の「検察起訴と裁判所の有罪判決」をISD請求に対する客観的証拠として提出しています。
  韓国は、オウンゴールも同様で、あまり賢くありません。
 
 
 韓国が、国内の司法制度が未成熟ということについて、今回の朝鮮半島労働者の訴訟で露見しました。
 韓国が、ISD条項が必要な国な国であるということに間違いはなさそうです。
 
 なお、日本と韓国は、TTPとかFTAとかの貿易協定を締結していませんから、残念ながら、ISD条項を利用できる場面はなさそうです。
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