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2018年バックナンバー

雑記帳

日本の潜水艦、南シナ海で演習

 平成30年9月17日、海上自衛隊は、平成30年9月13日、南シナ海で対潜水艦戦を想定した訓練を実施したと明らかにしました。
 アメリカ・フィリピン海軍と合同訓練を行ったという内容です。

 

 海上自衛隊は、訓練に参加した戦力をインド太平洋方面の派遣部隊である、護衛艦「かが」(国際分類では「ヘリ空母」)・護衛艦「いなづま」(国際分類でも汎用護衛艦)・護衛艦「すずつき」(国際分類で「駆逐艦」)と、隠密に行動していた潜水艦「くろしお」と発表しました。

 

  海上自衛隊は、護衛艦「かが」「いなづま」「すずつき」が、平成30年8月末から、インド太平洋地域の国々と合同訓練を実施すると発表していましたが、「くろしお」の動きは公開されていませんでした。

 

 また、防衛省は、南シナ海での対潜水艦戦を想定した訓練について、15年以上前から行ってきたと発表しました。
 公表は初めてのことです。

 

 海上自衛隊で、現在軍務についている潜水艦は21隻(そうりゅう型潜水艦10隻、おやしお型潜水艦11隻)と公表されていますが、通常、潜水艦が、どの海域でどのような行動を取っているかは秘密です。

 

 なぜ、日本は、「くろしお」が、南シナ海で、海上自衛隊の護衛艦3隻と、アメリカ・フィリピン海軍とで、対潜水艦戦を想定した訓練を実施したと公表したのでしょうか。

 

 中国は、中国の海南島を基地として原子力潜水艦を運用しています。

 

 中国にとって戦略原子力潜水艦は最優先保護の対象です。

 中国はアメリカとロシアとの核抑止を意図しています。
 アメリカとロシアの先制核攻撃を防ぐため、高額な報復戦力の整備をしなければなりません。

 

 中国が核攻撃を受けた場合、南シナ海で行動している核ミサイル搭載潜水艦から、核ミサイルを発射します。
 仮に、地上にある中国の核ミサイルがすべて攻撃されて壊滅したとしても、核ミサイル搭載潜水艦からの核ミサイルは生き残りますから、相手国の戦略地点を核攻撃できます。

 

 ということになれば、中国に対する核による一斉攻撃を抑止できます。

 

 そのための高額な核兵器と弾道弾であり専用の搭載潜水艦です。
 つまり戦略原子力潜水艦は国家安全保障の水準で最重要戦力であり、また、最優先保護の対象となります。

 

 中国の場合、そして南沙を含む周辺海域の聖域化を追求しています。
 「そこを狙え」と言っているようなものです。
 
 アメリカは、南シナ海に、米海軍は音響観測艦、哨戒機、そして、攻撃原子力潜水艦を送込んでいます。

 

 海上自衛隊が、日本の潜水艦を南シナ海で運用していなければ、中国としては、アメリカの哨戒機や原子力潜水艦にだけ注意をしていればいい理屈になります。
 南シナ海に、潜水艦を運用できるのは、アメリカと日本だけだからです。

 

 日本の海上自衛隊が、南シナ海に、潜水艦を運用しているということになると、平時戦時を問わず日本は戦略原子力潜水艦に脅威を与えることになります。

 

 現実に、海上自衛隊の潜水艦が、南シナ海にいようがいまいが、中国は、戦略原子力潜水艦を守るために、海上自衛隊の潜水艦が、南シナ海にいるという前提で行動しなければなりません。

 

 中国が、海上自衛隊のくろしおの行動を探知できていれば、中国にとって、さほど問題ではありません。

 

 中国が、海上自衛隊のくろしおの行動を探知できていなかったとすると、1世代前の、おやしお型潜水艦の行動を探知できないのですから、まして、最新式のそうりゅう型潜水艦の行動を探知することができるはずはありません。

 

 今回の海上自衛隊の発表は、中国が、海上自衛隊のくろしおの行動に気づいていないという前提での発表だと思います。

 

 潜水艦には、それぞれの潜水艦のスクリュー音があり、指紋のように1艦1艦異なりますから、平成30年9月13日、南シナ海で対潜水艦戦を想定した訓練を実施していた潜水艦が、くろしおであると特定されてしまいます。

 

 中国海軍力は分散を強いられることになります。
 当然、日本潜水艦は海南島を基地とする中国戦略原子力潜水艦=核ミサイル搭載潜水艦に向けられます。
 中国は、平時戦時を問わず日本は戦略原子力潜水艦に脅威を受けることになります。

 

 中国としては、海上自衛隊の南シナ海への潜水艦投入により、日本、東シナ海や太平洋に向けられる中国海軍力を減らさざるをえなくなります。

 尖閣諸島、先島諸島、太平洋に投入される艦隊戦力は減少します。


 また、対日戦を避ける要素ともなります。

 

 中国が「日本は戦時に戦略原子力潜水艦を襲う」「沈められる可能性がある」と認識させれば、戦略原子力潜水艦つまり対米抑止力の消耗喪失を恐れます。
 そのため対日戦に二の足を踏むとの効果を見込めます。


 海上自衛隊が、あえて、極秘であるはずの潜水艦の行動を公表した理由はそれでしょう。

 

 中国が、今回のくろしおの行動を探知できていないというのはショックでしょうね。
 ついでに、南シナ海での潜水艦の訓練を15年以上前から行ってきたというのもショックでしょう。

 

 ただ、中国が、今回のくろしおの行動を探知していたとしたら、日本は「単なる」「まぬけ」ということになります。

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