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　「網走番外地」という映画があります。

 

   東映の製作・配給により劇場公開された刑務所映画で、高倉健が主演をつとめました。

 

　「番外地」という表現は、法律的に厳密にいうと正しくありません。
　網走刑務所の所在地は、北海道網走市三眺「無番地」です。

 

　無番地は、刑務所だけではありません。
　国有地なら、無番地であることが多いのです。

 

　例えば、千葉地方裁判所松戸支部・千葉家庭裁判所松戸支部・松戸簡易裁判所の所在は「千葉県松戸市岩瀬無番地」となっています。
 

　千葉地方裁判所松戸支部・千葉家庭裁判所松戸支部・松戸簡易裁判所宛の郵便は「千葉県松戸市岩瀬」では正しくありません。正しくは「千葉県松戸市岩瀬無番地」です。

 

　現在はどうか知りませんが、私が司法修習生だったときに「千葉県松戸市岩瀬無番地」には、裁判官官舎があり、司法研修所の教官のうちには、自宅が松戸の官舎であるという教官もいました。

 

　子どもが「千葉県松戸市岩瀬無番地」ということで、いじめにあっているということでした。

 

　不動産には、原則として「地番」が付されます。
　地番は、法務局が登記された土地に付した番号のことです。

 

　地番には、地租を徴収する目的がありました。
　地租とは、明治６年（１８７３年）の地租改正法によって制定された土地を対象に賦課された租税のことです。
　昭和２５年（１９５０年）に廃止され、新設されたの固定資産税に継承されています。

 

　国有地からは地租は徴収できません。当然のことですね。
　現在も、国有地には固定資産税はかかりません。

 

　国有地に、地番を付したところで、何の役にも立ちません。地租がかからないからです。
　国有地に地番を付しても問題ないのですが、あえて地番を付する必要が無いこともあり、ある程度広い土地が「無番地」となっているのです。

 

　網走刑務所や千葉地裁松戸支部などはその典型ですね。

 

　住所を表すのに、市区町村が定めた「〇丁目〇番〇号」「〇番〇号」という「住居表示」が施行されている地域があります。住居表示実施区域と呼ばれます。
　他方、未実施区域では「地番」を元に住所が定められます。

 

　住居表示実施区域の場合、「無番地」とされている土地も、「〇丁目〇番〇号」「〇番〇号」という「住居表示」がつけられます

 

  網走刑務所や千葉地裁松戸支部などは、住居表示実施区域ではない田舎（松戸支部は昔は田舎）ですから、住所が「無番地」となっています。

 

　松戸駅から徒歩５分の千葉地裁松戸支部などは、近い将来、住居表示実施区域となり「無番地」から「〇番〇号」になるでしょう。