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2018年バックナンバー

雑記帳

詐欺破産

 旅行会社「てるみくらぶ」をめぐる詐欺事件で、破産を見越して個人資産を隠したとして、警視庁は、平成30年2月7日、同社社長の山田千賀子被告人(67)=詐欺罪などで起訴ずみ=を破産法違反(詐欺破産)の容疑で再逮捕しました。
 
 山田被告人は、平成29年3月、社内に保管していた個人資産の現金約1000万円を持出して自宅に隠すなどした疑いがもたれています。
 
 詐欺破産罪とはなんでしょう。
 
 破産法に定められている刑罰です。
 
第265条 破産手続開始の前後を問わず、債権者を害する目的で、次の各号のいずれかに該当する行為をした者は、債務者(相続財産の破産にあっては相続財産、信託財産の破産にあっては信託財産。次項において同じ。)について破産手続開始の決定が確定したときは、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する(一部略)。
一 債務者の財産(相続財産の破産にあっては相続財産に属する財産、信託財産の破産にあっては信託財産に属する財産。以下この条において同じ。)を隠匿し、又は損壊する行為
二 債務者の財産の譲渡又は債務の負担を仮装する行為
三 債務者の財産の現状を改変して、その価格を減損する行為
四 債務者の財産を債権者の不利益に処分し、又は債権者に不利益な債務を債務者が負担する行為
(後略)
 
 旅行会社「てるみくらぶ」社長の山田千賀子被告人は、旅行会社「てるみくらぶ」の三井住友銀行や東日本銀行から事業資金などの融資を受ける際、連帯保証人になっていて、連帯保証人としての債務総額は、平成29年3月の時点で約30億円に上っていました。
 
 旅行会社「てるみくらぶ」社長の山田千賀子被告人は、平成29年4月に東京地裁から個人破産の開始決定を受ける前、管財人による回収を免れるために約1000万円分の資産を隠した疑いが持たれています。
 
 山田千賀子被告人は、破産管財人に対し「蓄財はない」と説明していましたが、家宅捜索で自宅から現金700万円が見つかっています。
 
 個人破産も避けられないと認識し、資産を隠したとみられます。
 
 申立代理人の弁護士の面目丸つぶれです。
 
 
 このケースはは極端としても、弁護士としては、破産申立にあたり、破産申立人の財産はもれなく記載することを指導します。
 
 財産の隠匿は、免責不許可理由になります。
 
破産法252条1項に定められています。
 
 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
一 債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと
二 破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと
三 特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと
(以下、略)
 
なお、四号以下で、よくある免責不許可理由は以下のとおりです。
(浪費・賭博)
四 浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと
(詐術による信用取引)
五 破産手続開始の申立てがあった日の1年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと
(帳簿改ざん)
六 業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと
(7年以内の破産・個人民事再生)
十 次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から7年以内に免責許可の申立てがあったこと
イ 免責許可の決定が確定したこと 当該免責許可の決定の確定の日
ロ 民事再生法(平成11年法律第225号)第239条第1項 に規定する給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと 当該再生計画認可の決定の確定の日
ハ 民事再生法第235条第1項(同法第244条において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと 当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日
 
 旅行会社「てるみくらぶ」の社長の場合、個人資産の現金約1000万円を持出して自宅に隠したのですから、免責は問題外です。
 
 ただ、比較的少額の債務の破産でも、申立代理人に、正直に財産を申告しないと免責を受けられない場合があります。
 
 詐欺破産にあたります。
 
 確かに、わずかの財産隠しで、起訴される可能性は低いです。
 しかし、免責を得られなければ、破産をした意味がありません。

  申立代理人には、正直に財産を申告すべきです。
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