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2018年バックナンバー

雑記帳

奨学金破産

 国の奨学金を返せず自己破産するケースが多くなっています。
 
 借りた本人だけでなく、親等の連帯保証人や親族等の保証人にも広がっています。
 
 日本学生支援機構機構は、平成2年度に日本育英会から改組した独立行政法人で、大学などへの進学時に奨学金を貸与します。
 
 担保や審査はなく、卒業から20年以内に分割で返すことになります。
 
 借りる人は連帯保証人(父母のどちらか)と保証人(4親等以内)を立てる「人的保証」か、保証機関に保証料を払う「機関保証」を選びます。機関保証の場合、保証料が奨学金から差引かれます。
 
 平成28年度末現在、410万人が返しています。
 
 日本学生支援機構機構などによると、奨学金にからむ自己破産は平成28年度までの5年間で延べ(1人で大学と大学院で借りた場合などに「2人」と数えています)1万5338人です。
 
 内訳は本人が8108人で、連帯保証人と保証人が計7230人でした。
 
 連帯保証人(父母のどちらか)と、保証人(4親等以内)の違いは、「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」の有無の違いです。
 
 催告の抗弁権とは、債権者が保証人に債務の履行を請求したときに、保証人が、まず主たる債務者に催告をなすべき旨を請求することができる権利をいいます(民法452条本文)。
 
 検索の抗弁権とは、保証人が、債権者に対し、主たる債務者の財産につき執行をなすまで自己の保証債務の履行を拒むことができる権利をいいます(民法453条)。
 
 連帯保証人には「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」がなく(民法454条)、保証人には「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」があります。
 
 つまり、債権者の場合は、主債務者、連帯保証人の、とりやすい方からとればよいということになりますが、保証人の場合は、まず主債務者に強制執行してから、あるいは、主債務者が破産している場合等しか請求できません。
 
 ただ、本人が破産し、連帯保証人が破産し、保証人にも返済能力がなければ、保証人(4親等以内)も破産せざるを得ません。

 国内の自己破産が減る中、奨学金関連は3000人前後が続いていて、平成28年度は最多の3451人と5年前より13%増えたとのことです。
 
 奨学金にからむ自己破産は、学費の値上がりや非正規雇用の広がりに加え、機構が回収を強めたからでもあります。新たな貸付資金の確保はもちろん、モラルリスクの問題もあります。
 
 日本学生支援機構機構が、本人らに返還を促すよう、裁判所に裁判や調停で申立てた件数は、この5年間で約4万5000件だそうです。
 
 給与の差押さえなど強制執行に至ったのは平成28年度に387件のみです。
 
 これは、曲がりなりにもわずかずつ返済しているか、自己破産したかなどで、強制執行しない場合等もあるでしょうし、非正規雇用者の給料を差押さえても、すぐ、退職されてしまって、結局とりはぐれるということもあるでしょう。
 
 奨学金をめぐっては、返還に苦しむ若者が続出したため、機構は平成28年度、延滞金の利率を10%から5%に下げ、年収300万円以下の人に返還を猶予する制度の利用期間を5年から10年に延ばすなどの対策を採っています。
 
 その後も自己破産は後を絶ちません。
 
 自己破産は、一般の人が思うよりは、デメリットが小さいということも理由の一つです。
 
 第三者から見ると、無理して、高等教育を受けるまでのことはないとは思いますが、本人や親などは、そうもいかないのでしょうね。
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