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2018年バックナンバー

雑記帳

ドイツ2大政党が連立へ合意

 平成30年2月7日、ドイツのメルケル首相率いる保守系のCDU/CSU(キリスト教民主・キリスト教社会同盟)と、連邦議会第2党の中道左派・社会民主党(SPD)が、次期連立政権樹立で最終合意しました。
 
 平成29年9月の総選挙以降、政治空白が続いてきましたが、危機打開に向けて二大政党が足並みをそろえた格好です。
 
 医療保険改革と雇用政策を巡り溝もありましたが、最終的に妥協が成立しました。

 玉虫色で、棚上げ的な妥協のようです。
 
 SPDが、重要閣僚ポスト配分で、連邦首相につぐナンバー2とナンバー3にあたる財務相のほか外相を獲得するとの合意です。
 
 CDU/CSUが信じられないくらい譲ったことになります。
 
 SPDのシュルツ党首は、平成30年2月7日、党首を辞任する考えを明らかにしました。
 
 SPDはCDU/CSUと大連立政権の樹立で合意したのですが、いったんは下野する方針を表明しながら大連立へと方針転換したシュルツ氏への不満が党内で強まっていたからです。
 
 シュルツ氏は、大連立政権が成立すれば外相として入閣する考えであることを明らかにしましたが、党内で慎重論が強かった大連立を主導したうえ、自ら入閣するとなれば、党内の批判がさらに強まりかねないということになります。
 本来は、身を引くのが賢明だとは思いますが・・・
 
 これで「万事めでたしめでたし」というわけにはいきません。
 
 SPDは約46万人全党員の投票で大連立の是非を最終判断します。
 
 SPD党員の間には、党が過去4年間メルケル連立政権に参加してきたことへの否定的評価も多く、党員投票の結果は予断を許しません。
 
 SPDの党員投票は今後郵送で行われ、結果判明は平成30年3月上旬になるとみられています。
 
 大連立継続が否決されれば、再選挙はほぼ確実で、ドイツ政治は混迷に陥ることになります。
 
 また、CDU/CSUとSPDが大連立を組むと、CDU/CSU、SPDに次ぐ議席を獲得した「ドイツのための選択肢」(AfD)が野党第一党になります。
 
 CDU/CSU 246
 SPD ドイツ社会民主党 153
 AfD ドイツのための選択肢 94
 FDP 自由民主党 80
 Linke 左翼党 69
 Gruene 緑の党 67
 
 AfDは、ギリシャ経済危機を契機に反EUを掲げて結党され、ドイツのEU離脱を最大の目標として掲げている政党で、移民問題についても強く反対している事から右派政党とされます。「極右政党」と紹介される場合もありますが、極右政党というほどではありません。
 
 なお、ドイツ基本法(憲法)21条2項には「政党で、その目的または党員の行動が自由で民主的な基本秩序を侵害もしくは除去し、または、ドイツ連邦共和国の存立を危くすることを目指すものは、違憲である。違憲の問題については、連邦憲法裁判所が決定する」という定めがありますから「自由で民主的な基本秩序を侵害する」ほどの政党はでないようなしかけになっています。
 
 ドイツでは、野党第1党は議会の慣例で数々の特権が認められています。
 
 まず、予算委員会の委員長ポストを獲得します。
 
 連邦予算を扱う予算委員会は、欧州政策や難民問題など様々な問題に影響を及ぼせます。

 予算委員会では、平成30年1月、CDU/CSUとSPDによる大連立政権の誕生を見越し、AfDの議員を委員長に選んでいます。
 
 予算委員会の決定は多数決ですが、議事進行の役割は大きく、その気になれば反対する案件の審議を遅らせることもできます。
 
 AfDはこのほか、法務と観光の両委員会でも委員長ポストを手にしています。
 
 
 メルケル連邦首相が、弱まった求心力を回復できるかは微妙です。
 
 SPDだけでなく、CDU/CSUの中にも大連立によって党が左傾化することへの反発がくすぶり、政権運営は波乱含みで、メルケル連邦首相が、次の議会選挙までの4年間、連邦首相の座を守り続けられるかを疑問視する声もあります。
 かといって、ライバルは不在です。メルケル連邦首相が、全部つぶしてきましたから。
 
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