2018年バックナンバー
雑記帳
司法取引・平成30年6月開始
平成28年5月24日に可決成立した刑事訴訟法等の一部を改正する法律(改正刑事訴訟法)が、平成28年6月3日に公布されました。
政府は、平成30年1月24日、司法取引を導入する改正刑事訴訟法の施行日を平成30年6月1日とする方針を固め、与党との最終調整を始めました。
企業犯罪の摘発に主眼を置いているとも思われる日本版「司法取引」の規定が施行されます。
1 合意制度(日本版・司法取引)の導入
一定の薬物銃器犯罪、経済犯罪を対象として弁護人の同意を条件に検察官が被疑者・被告人と取引をすることが可能となります。
被疑者・被告人が他人の犯罪事実を明らかにするために供述や証言等をする代わりに、検察官が不起訴や求刑の軽減等を行う合意を行います。裁判所で自己に不利益な証言をする代わりに裁判所の決定で免責することも可能となります。
2 通信傍受の拡大
これまで薬物・銃器犯罪に限定されていた通信傍受の対象事件に殺人、略取・誘拐、詐欺、窃盗、児童ポルノ事件を追加します。
あらかじめ役割の分担に従って行動する人の結合体により行われると疑うに足りる状況を要件として通信の傍受を行うことができます。
振込め詐欺等の取締まり強化が期待できます。
合意制度(日本版・司法取引)の導入については「他人の刑事事件への協力のための合意」(刑事訴訟法350条の2)に定められています。
1 特定犯罪について
2 他人の刑事事件に関し
3 取調べで供述、公判等で証言、証拠の提出等を行い
4 それに対して不起訴、公訴取消、特定の訴因・罰条の加減、略式・即決手続に付する等の合意をすることができるようになります。
また弁護士の必要的合意が定められています(刑事訴訟法350条の3)。
そして対象となる特定の犯罪とは、贈収賄(刑法197条、197条の2、197条の3、197条の4)など、組織犯罪、租税に関する法律、独占禁止法、金融商品取引法、その他の財政経済関係犯罪として政令で定めるもの、爆発物取締罰則など特別法など(刑事訴訟法350条の2の2項)が列挙されています。
なお、不起訴の合意をしても、検察審査会が起訴決議をしたときは起訴されてしまうようです(刑事訴訟法350条の11)。
贈収賄など共犯者がいて起訴が難しい犯罪や組織犯罪の解明に役立つものですが、他方、うその供述で他人を陥れたり、共犯者に自分の罪をかぶせたりする危険性も指摘されています。