2018年バックナンバー
雑記帳
民法改正案・相続で配偶者に居住権
法務省(法制審議会部会)は、平成30年1月16日、死亡した人(被相続人)の遺産分割で配偶者の優遇を図る民法改正案を、平成30年1月22日召集の通常国会に提出する方針を固めました。
民法の相続分野の大幅な見直しは、昭和55年以来のことで、約40年ぶりとなります。
昭和55年の改正は、昭和56年1月1日施行の法律で、妻が子と相続する場合、相続分が3分の1だったものが、2分の1になっています。ちなみに、私が、裁判官になった当時は、妻が子と相続する場合、妻の相続分は3分の1でした。
今回の改正は、配偶者が相続開始時に居住していた建物に住み続ける権利「配偶者居住権」の新設や、婚姻期間が長期間の場合に配偶者が生前贈与や遺言で譲り受けた住居(土地・建物)は原則として遺産分割の計算対象とみなさないようにすることなどが柱です。
配偶者の老後の経済的安定につなげる狙いがあります。
要綱案で新設する配偶者の居住権は、原則亡くなるまで行使でき、譲渡や売買はできなません。
その評価額は、平均余命などを基に算出され配偶者が高齢であるほど安くなることが想定されています。
現行法でも配偶者が建物の所有権を得て住続けることができますが、建物の評価額が高額の場合、他の相続財産を十分に取得できない恐れが指摘されてきました。
配偶者が居住権を得ることを選択すれば、他の財産の取り分が実質的に増えると見込まれます。
例えば、現行法では、夫が死亡して、妻と子2人が土地建物(評価額2000万円)と現金など他の財産(3000万円)を相続する場合、遺産の取分は原則として、妻が2分の1(2500万円)、子が4分の1(1250万円)ずつで、妻が家の所有権を得て相続すると現金などは500万円しか得られないことになります。
これに対し居住権の評価額は所有権より安くなり、その分、他の財産を多く受け取れることになります。
また、現行法では生前贈与などがされた住居は被相続人が遺言などで「住居は遺産に含まない」といった意思表示(持戻しの免除)をしていなければ、遺産分割の計算対象となります。
そのため、要綱案は、婚姻期間が20年以上であれば、配偶者が生前贈与などで得た住居は「遺産とみなさない」という意思表示(持戻しの免除の意思表示)があったものと推定する規定を民法に加えることとしました。
このほか、要綱案は、相続人以外の被相続人の親族(相続人の妻など)が被相続人の介護を行った場合、一定の要件を満たせば相続人に金銭請求できるようにします。
また、現行で自筆でなければならない自筆証書遺言の財産目録をパソコンで作成することも可能とし、法務局で自筆証書遺言を保管する制度を創設する案も盛込んでいます。