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2020年バックナンバー

雑記帳

GPSとストーカー

 令和2年7月30日、最高裁第1小法廷は、元交際相手らの車に無断で衛星利用測位システム(GPS)を取り付けて居場所を知ることが、ストーカー規制法が禁じる「見張り」に当たるかどうかについて「見張りに当たらない」との初判断を示しました。
 
 ストーカー規制法は住居や勤務先など相手が普段いる場所の近くで見張ることを禁じていますが、GPSに関する規定はありません。
 
 判決理由で、同法の「見張り」の定義を「機器を使う場合であっても、相手が普段いる場所の付近という一定の場所で、動静を観察する行為」と判断し、離れた場所の車の位置情報を知ることは見張りに当たらないとしました。
 
 ストーカーやDV事件で、加害者が市販のGPS発信機を被害者の車などに装着するなどして居場所を特定し、事件に及ぶケースが後を絶ちません。 
 
 警察は被害者に対し、住民基本台帳の閲覧制限をするよう指導してきましたが、対策が骨抜きにされかねない恐れもあります。
 
 大阪の日本橋(にっぽんばし。「にほんばし」と読むのは誤りです)には、本来は高齢者や子どもの位置検索などに使われるGPS発信機を販売する店が並んでいます。
 「電池は4日間持つし、地上にいる限り居場所もわかるし、時刻もある程度わかる」というふれこみです。
 「探偵に頼むよりずっと安い」ですね。
 
 住民票の閲覧制限など被害者が手を尽くして避難しても、居場所を知られた事例がよくあるといい「GPS発信機が使われるケースは増えている」そうです。
 
 平成26年2月、群馬県館林市で、女性(当時26歳)が元交際相手のストーカーの男(その後自殺)に拳銃で射殺された事件で、閲覧制限をかけていた女性の居場所を割り出そうと、男が使ったのがGPS発信機でした。
 
 警察によると男は知人に指示し、まず女性の家族の車にレンタルのGPSを装着させました。それにより女性本人の車や住所を把握した上で、女性の車に対して、自分で購入した別のGPSを付けて追跡、事件に及んでいました。
 
  防ぐ方法はないのでしょうか。
 
 敷地に入ったことによる住居侵入はありえますね。
 また、住民基本台帳の閲覧制限をしても、地方公共団体職員がミスをすれば終わりです。
 そんな事件がありましたね。
 
 また、おおよその住所を知りたければ、特定記録郵便で手紙を送付し、郵便番号検索サービスで検索をすれば、転送先の郵便局がわかってしまいます。
 転送先住所がどこになっているかは、23条照会はもちろん、裁判所の調査嘱託でも拒否されますが、実際に郵便を出せばおおよその見当はつきます。
 転送先は、被害者の家族宅にするのが賢明です。
 
 ちなみに、こう書いたからといって、私は「本当の」DV事案は扱いません。
 「本当の」と書いたのは、「なんちゃってDV事件」が余りに多いからです。
 当事務所は、私と女性事務員だけですから、「本当の」DV事案を受任し、加害者が事務所に来て、殺傷されたらかないません。
 なお、「本当の」DV事案は、屈強な男性事務員のいる法律事務所の弁護士さんに依頼すべきでしょう。
 
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