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2020年バックナンバー

雑記帳

死刑廃止宣言無効訴え、京都の弁護士 日弁連など提訴

 京都弁護士会の南出喜久治弁護士は、令和2年11月16日、死刑制度の廃止を目指すとした日本弁護士連合会の宣言が会の目的を逸脱しているとして、日弁連などを相手取って、宣言の無効確認などを求めて京都地裁に提訴しました。
 
 理由は、特定の見解をまるで組織の総意であるかのように装い、発信すべきではないという理由です。
 
 日弁連は平成28年の人権擁護大会で「令和2年(2020年)までに死刑制度廃止を目指す」との宣言案を賛成多数で採択しました。
 
 死刑制度に対する考え方は会員それぞれで異なるため、日弁連などが多数決で決める事柄ではないと指摘し、採択された宣言は無効と主張しています。
 
 問題は、弁護士会が「強制加入団体」であるということです。
 
 よく比較される事例として医師があります。
 医師となるには、医師国家試験に合格し厚生労働大臣の免許を受ければ医師としての仕事ができます。
 
 弁護士はそうではありません。
 弁護士となるには、司法試験に合格し司法修習を終えるなどして弁護士となる資格を取得したうえ、入会を希望する単位弁護士会を経て、日本弁護士連合会(日弁連)に備えた弁護士名簿に登録される必要があります。
 つまり、弁護士となる資格を有していても、単位弁護士会に加入し日弁連に登録しなければ、弁護士としての仕事はできません。
 
 弁護士会に強制加入制が認められている理由は、「弁護士自治」と密接な関わりがあります。 
 
 「弁護士自治」とは、弁護士の資格審査や登録、懲戒を弁護士の自律に任せ、弁護士の職務活動や規律を、裁判所や検察庁あるいは行政官庁等の監督に服せしめないことを言います。
 
 弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現する使命を負っており(弁護士法1条)、弁護士がその使命を全うするには、時に国家権力と対立して戦わなければなりません。
 もし弁護士が行政官庁の監督下に置かれたら、懲戒権の行使等を恐れ、使命を全うできなくなってしまいます。
 
 弁護士が非違行為をしたという疑いがあるとき、非違行為をしたかどうか、また、どのような処分にするかは、弁護士会が判断し、最高裁判所や法務大臣が判断するわけではありません。
 単位弁護士会が、綱紀委員会の判断に基づき、懲戒委員会の審理が相当と判断すれば、懲戒委員会にかけられ、除名、退会命令、業務停止、戒告、あるいは、結局、結局懲戒しないという判断がなされます。
 懲戒処分を受けた会員は、日弁連に不服申立ができます。
 
 もし、弁護士会を強制加入団体ではなく、任意加入団体にすると、懲戒の実効性がなくなります。
 除名、退会命令、業務停止の処分を受けたくなければ、最初から弁護士会に加入しない、あるいは、除名、退会命令、業務停止の処分を受けても、脱会すれば弁護士の仕事ができるとしたのでは意味ありません。
 
 医師は、厚生労働大臣が医師に対する懲戒権を有していて、医師会に懲戒権かありませんから、任意団体でもよいことになります。

 ただ、強制加入団体である日本弁護士連合会や、単位弁護士会の会長が、政治的な問題について声明を出すのは、やはり疑問ですね。
 
 取調べの可視化を求める声明などは、あまり弁護士に異論はないかと思います。
 
 しかし、死刑廃止論者の弁護士は、むしろ少数ではないかと思います。
 弁護士は、被告人の弁護人としてだけではなく、被害者の代理人にもなりますから。
 
 朝鮮学校の高校無償化法などは、弁護士会としては反対の声明を出していますが、かなり多数の弁護士が、最高裁判所の判決と同じく、無償化の必要はないと考えているでしょう。
 
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