本文へ移動

2021年2022年バックナンバー

雑記帳

交通事故の損害賠償請求訴訟が全国の簡易裁判所で急増

 交通事故の損害賠償請求訴訟が全国の簡易裁判所で急増しています。

 簡易裁判所の訴訟は140万円までしか審理できまんから、あまり弁護士は手を出していませんでした。

 任意保険に「弁護士特約」をつける契約が普及し、被害額の少ない物損事故でも弁護士を依頼して訴訟で争うケースが増えたことが原因です。

 弁護士特約は、平成12年、日本弁護士連合会と損害保険各社が協力して商品化しました。
 事故の当事者が示談や訴訟の対応を弁護士に依頼した場合、その費用が300万円程度までの範囲で保険金で支払われます。
 現在、弁護士特約に加入していないドライバーの方が少ないという印象です。

 重大事故で保険加入者を保護する目的で導入された側面がありますが、被害が軽微な物損事故で使われているのが実態となっています。

 死亡事故など大きな損害賠償になれば、弁護士特約がなくても、弁護士は、わずかの着手金で訴訟を提起し、保険会社からえた賠償金から、成功報酬とともに、着手金残額を回収します。
 弁護士に委任することは容易です。

 問題は、訴訟提起がペイしない場合です。
 弁護士特約がないころは、訴訟を提起すると、弁護士費用を支払えば、わずかしか残らなかったり、逆に、マイナスになることがありました。

 300万円以下の訴訟の場合、着手金は8%+消費税、成功報酬は16%+消費税ですが、訴訟の着手金の最低額は10万円+消費税という別途の規程があります。
 また、印紙や切手の実費もかかります。

 物損のみで、20万円の訴訟を提起して、15万円を回収したとしましょう。
 着手金は10万8000円、成功報酬は2万4000円です。
 印紙が3000円、切手が4500円くらいです。
 ほとんど残りませんね。
 逆に、10万円しか回収できなければ赤字です。

 ですから、物損のみの場合、悪質な加害者は、任意保険をつかって弁償しようとせず(任意保険をつかうと、年間の保険料が高くなります)、「訴訟を起こせるものなら起こしてみろ」という態度にでることが多かったという「いきさつ」があります。

 なお、弁護士が報酬額を引き上げるために審理を長引かせているとの指摘も出ていて、日本弁護士連合会は実態把握に乗り出しています。

 仕事の少ない弁護士が、物損事件を時給制(タイムチャージ)で事件を受任します。

 時給制(タイムチャージ)ですから、時間をかければかけるだけ報酬が増加していきます。
 それも、1時間2万2000円ですから、時間をかけたくなる弁護士も多いと思います。
 背に腹は代えられないという事情もあるのかもしれません。

 交通事故がメインの法律事務所では、通常の簡裁の被告事件をイソ弁にさせます。イソ弁は、大阪地裁管内の簡裁、あるいは、近畿地方の簡裁を飛び回り、訟廷日誌(若い人はスマートフォンを使っている人が多いです)は予定で一杯、ほとんど、それだけの事件の処理のみに追われている人も多いようです。
 通常の弁護士としての知識経験を獲得できないということから、心を病む人も多いようです。
 無事勤めていれば、数年後に、損害保険会社1社の顧問にしてもらい、独立させられることもあるようです。

 もちろん、見込みのある弁護士は、将来パートーになることも考え、大切に育て上げます。使い捨てなどにはしません。

 ただ、それは、各弁護士の資質能力によるものであり、雇用している弁護士を責める理由はありません。
 ただ、少し気の毒な気がします。
 
TOPへ戻る