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2021年2022年バックナンバー

雑記帳

分断国家

 第二次世界大戦後に、分断国家ができました。
 東西ドイツ、南北ベトナム、北朝鮮と韓国です。

 南北ベトナムは、アメリカと中国・ロシアの代理戦争の結果、北ベトナムが、武力統一していますから、北ベトナムが、他の国に気をつかう必要はありません。

 東西ドイツは、東西ドイツの話し合いの結果、西ドイツが東ドイツを平和裡に吸収合併しました。
 周辺各国に慎重に根回しした上での吸収合併です。
 西ドイツによるドイツの統一は、東西ドイツの政府の合意だけでは成立するはずはありません。
 ドイツが統一されたら、ヨーロッパ一の強大な国になることは確実です。

 イギリスやフランスなどドイツ周辺諸国の人々は、歴史的な教訓として「強いドイツは危険な存在だ」と考えています。
 「ドイツ大好き」「大好きなドイツは2つあったほうがいい」ということですね。
 イギリスはサッチャー首相、フランスはミッテラン大統領の時代です。

 軍事的には、ドイツ国防軍は、NATOの指揮下に入っています。
 ただ、ドイツが力を付けてきたら、軍事的にどうなるかわかりません。
 経済的にも、ただでさえ、ドイツ統一時にヨーロッパのトップの経済力だったのが、それ以上の経済力を持つことに間違いがありません。
 イギリスやフランスは反対しましたが、アメリカが統一を強く支持しました。

ドイツが再び強大になる懸念より、弱体化したソ連(後のロシア)がいずれ再び力を盛り返す可能性の方を心配していました。
 ある程度ドイツの強大化を許し、アメリカ傘下の同盟国となったドイツをソ連(後のロシア)対抗させた方が良いとブッシュ大統領(父)は考え、イギリスやフランスの反対を抑えました。

 イギリスやフランスの懸念に対し、ドイツのコール連邦首相がとった戦略は、自分の国を、二度と周辺国と戦争できないような状況に置いてみせることでした。

 ドイツの主権の一部を、周辺国との合議の場に預けることになるEUの統合に積極的に参加することで、自国中心の強大化を押し進めない姿勢を見せました。
 強いマルクではなく、統一通貨ユーロを強力に推し進めることにしました。
 旧東ドイツに駐留していたソ連軍の撤退費用を大盤振る舞いしました。
 多大な犠牲を支払い、やっと周辺国の同意を得て統一にこぎつけました。
 貧乏な旧東ドイツには、惜しみなく資金をつぎ込みました。

 ベルリン大学で政治学と社会学を教えているクラウス・シュレーダー教授は、平成26年5月に「ドイツ統一にかかった費用は、2兆ユーロ(280兆円・当時の1ユーロ=140円)にのぼる」と発表しました。

 それでも、旧東ドイツ地域はいつまでたっても、発展しません。

 話を韓国と北朝鮮に戻します。

 朝鮮半島の歴史をみると、19世紀の日清戦争までは、ほぼ全期間にわたって、実質的に中国(の各王朝)の属国にすぎませんでしたし(李氏朝鮮は清の属国。高麗は元の属国。新羅は唐の属国など。それが証拠に、元号も、新羅において100年余り独自の元号が用いられましたが、他は、宗主国である中国王朝に敗れる前少しの期間を除いて中国王朝の元号を用いていました)、20世紀前半は日本と合邦し、第二次世界大戦後は、いずれも独り立ちできない北朝鮮と韓国が相対峙しています。
 
 残念ながら、朝鮮半島の人たちは、民族の運命を自身で決定したきたという経験はないに等しいのが実情です。
 中国と陸続きという気の毒な事情もありますが・・
 また、戦略上の要衝という位置にあったというのも気の毒です。
 民族の運命を自身で決定したきたという経験はないに等しいのに、自分たちだけで決めたいと淡い希望をいだくことはともかく、そうできると考えるのは、現実的ではありません。
 朝鮮半島は、「俳優」「主体」ではなく「舞台」「客体」であると言われています。
 理由は、朝鮮半島の人は、自分では戦争など紛争解決を主体的にすることがなかったにもかかわらず、戦略上の要衝にあることから、他の列強による戦場という舞台にばっかりなっているということです。

 血を流して独立戦争をしたことがない、戦争の大半は他の国に戦わせて、自国は分裂国家の相手方とまともに戦争したこともない、ドイツのように天文学的な統一費用を支払えない、だけど統一したいというのは虫がいいですね。

 北朝鮮は、韓国との統一を望んでいません。

 アメリカ、日本、中国、ロシアなど周辺国は、緩衝地帯として、韓国と北朝鮮の2国を必要としています。

 北朝鮮が韓国に呑み込まれますと、中国は、のど元に匕首を突きつけられたということになります。歴史的な経緯から、朝鮮族が中国やロシアに居住していることも不利な事情となります。
 逆に、韓国が北朝鮮に呑み込まれますと、日本やアメリカは、のど元に匕首を突きつけられたということになります。

 ドイツが余りに強大なため、分断されたままでいることが周辺国にとって望ましいのと異なり、韓国が北朝鮮は、東西陣営としては、緩衝地帯が必要なことから、分断されたままでいることが周辺国にとって望ましいということになります。

 「コリア大好き」「大好きなコリアは2つあった方がいい」ということですね。
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