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2021年2022年バックナンバー

雑記帳

「中国に依存してきたツケが直撃」輸出で稼げないのに物価上昇が止まらない韓国経済

 韓国経済の先行き懸念が高まっています。

 中国の上海で見られた「ゼロコロナ政策」と「脱グローバル化」の加速によって世界のサプライチェーンが寸断され、韓国経済に大きな支障が出ています。

 特に、韓国の貿易収支が赤字に転落する月が増えたことは見逃せません。
 中国のゼロコロナ政策によって韓国経済の成長を牽引してきた輸出の伸びが鈍化しています。
 その一方で、米中対立によってサプライチェーンは混乱しました。
 さらにウクライナ危機によって脱グローバル化が勢いづきました。
 世界の供給のボトルネックが深刻化し、韓国の輸入物価が急騰しています。

 その結果、令和3年12月、令和4年1月に続いて令和4年4月、5月と貿易収支は赤字に転落しました。
 輸出は増勢を保っていますが事態は深刻です。
 今後、韓国の貿易収支は赤字傾向が鮮明化するでしょう。
 それによって韓国ではGDP成長率が低下します。
 もともと、内需型の経済構造ではありません。

 韓国の輸入物価は上昇し、国内の生産者物価と消費者物価も押し上げられます。
 経済成長率の低下と物価高騰が同時進行し、資金流出が加速する展開が懸念されます。

 日本にとっても、韓国経済の現状は他人事ではありません。
 ただ、危機を感じるほど、日本経済は「やわ」ではありません。
 内需も韓国に比べて遙かに大きいですし、貿易収支やサービス収支が赤字になっても、第一次所得収支(対外金融債権・債務から生じる利子・配当金等の収支)が黒字ですから経常収支は黒字になります。
 また、日本から、資本逃避(capital flight。積極的な収益の追求ではなく、資産の保全、安全性の確保、つまり不慮の資本損失を回避するための資本移動)は起きません。

 中国共産党政権がゼロコロナ政策を徹底した結果として、韓国の輸出の増加ペースが鈍化しています。

 令和3年5月、韓国の輸出は45.6%増加しました。
 中国経済が急速に持ち直し、半導体や自動車、鉄鋼製品などの輸出が急増したことで、韓国の景気は緩やかに回復しました。

 しかし、その後、韓国の輸出の増加ペースは鈍化しました。不動産バブルの崩壊によって中国は高度経済成長期から安定成長期へ曲がり角を曲がりました。

 中国の深圳、上海、北京など経済規模の大きな都市がロックダウンに追込まれ、個人消費は急速に減少し、景況感は冷え込んでいます。
 連鎖反応のように不動産市況が一段と悪化し、都市部でさえ失業率が上昇しています。

 共産党政権は公共事業や中小企業向けの融資支援策など景気刺激策を強化していますが景気の減速が止まりません。
 韓国経済に与える負の影響は大きく、世界的な半導体の不足が深刻であるため輸出は増えてはいるものの、令和4年5月の輸出は同21.3%増と1年前に比べると勢いが弱まっています。

 中国の人々の自由は強く制限された状況が続くでしょう。
 外出が制限され動線の寸断が続くことによって、飲食、宿泊、交通などのサービス業だけでなく生産活動も停滞します。
 企業も家計も先行きを懸念し、支出を抑え、食料品や在庫を買いだめするでしょう。
 中国経済の減速傾向は一段と鮮明化し、アジア新興国や欧州経済の減速懸念も高まるということになります。
 中国を中心に韓国の輸出増加ペースはさらに鈍化する可能性が高いです。

 韓国経済は大きな転換点を迎えています。
 1960年代以降の韓国は、基本的には財閥系の大企業を優遇することによって、輸出主導型の経済運営構造を築き上げました。

 韓国企業はわが国から家電、自動車、半導体などの製造技術を、合法非合法の手段を問わず取得し、資材を輸入し、国内で完成品を大量生産して輸出することによって成長を遂げました。
 冷戦の終結により、経済がグローバル化され、アメリカは自由貿易協定(FTA)を推進することなどによって経済運営の効率性を高め、韓国はその恩恵を受けました。

 しかし、平成30年以降は米中の対立が激化したため、半導体やスマートフォンなど世界のサプライチェーンが大きく混乱しました。
 サプライチェーンの再編により企業のコストは上昇しました。
 それに加えてウクライナ危機の発生を境に、ドイツなどの欧州各国がロシアへのエネルギー依存脱却を急いでいます。
 金融、経済制裁によってロシアと西側諸国が分断され、世界経済がブロック化し始めました。
 その結果、世界的に原油や天然ガスなどのエネルギー資源価格が高騰しています。

 今後、韓国の貿易収支は赤字傾向をたどり、経済成長率の低下と物価の高騰がより鮮明となるでしょう。
 アメリカやヨーロッパなどで金融政策が大転換されることにより、資金流出の懸念も高まります。輸出面において中国の需要はさらに落ち込むでしょう。

 令和4年の中国経済の成長率はゼロコロナ政策や不動産バブル崩壊、IT先端企業の締め付けなどによって3%程度に落ち込む恐れが高まっています。
 米中対立の先鋭化、台湾海峡の緊迫化懸念も高まっています。

 他方で、半導体など成長期待の高い先端分野において中国は顧客から競合相手に変質しています。
 中国、韓国とも、産業補助金による工場建設や研究開発の支援、土地供与があますが、韓国企業は中国企業にかないません。
 韓国企業の輸出競争力は低下します。
 物価高騰によって世界の個人消費が徐々に鈍化することも韓国の輸出にマイナスです。

 その一方で、韓国の輸入物価は今後も上昇するでしょう。
 ウクライナ危機をきっかけにして、多くの国がロシア以外の国と地域からコストをかけてエネルギー資源などを買わなければならなりません。
 欧米の制裁によってその傾向は強まる。韓国はより高い価格で資材を輸入しなければならなくなります。

 韓国では生活水準の切り下げを余儀なくされる家計が増えます。
 内需の縮小均衡は加速し、海外に進出して成長を目指す経営体力のない中小企業はより強い逆風に直面します。
 労使の対立も激化するでしょう。

 連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)はインフレ退治のために急速に金融を引き締めはじめています。
 世界的な金利上昇と内需減少懸念によってウォンは売られ、韓国から流出する資金は増えそうです。

 アジア通貨危機、リーマンショック、令和2年3月のコロナショックなどの際には韓国から海外に資金が急速に流出しドル資金が枯渇しました。
 それとよく似た状況が起こることは確実です。

 令和4年7月5日、ドル・ウォンは1311まで下落しました。
 令和4年6月に、外貨準備高が約94億ドルを減らして必死に為替介入したにもかかわらずです。
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