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2021年2022年バックナンバー

雑記帳

参議院不要論

 参議院議員選挙がありますね。
 いつも、この時期になると、参議院不要論が議論されます。

 憲法の定めですから、参議院議員をなくすには憲法改正が必要です。

 「第二院は第一院と同じ意思決定をするのなら無駄である。また、異なる意思決定をするなら有害である」というフランス政治家の言葉を知っている方は多いでしょう。

 また、日本特有の参議院批判として、「衆議院のカーボンコピー」と批判されることがあります。

 2院制をとっている国は、世界的にみて必ずしも多くありません。
 人口の多い、いわゆる大国に限られます。

 G7の国をみてみましょう。
 直接選挙による大統領制の国(アメリカ、フランス)と、議院内閣制の国(日本、ドイツ、イギリス、イタリア、カナダ)があります。
 すべて二院制ですね。

 アメリカですが、大統領の権限が強く、両院の役割が違っています。
 予算案を含むすべての法案が成立するためには上下両院での承認が必要ですが、下院は予算案など歳入に関する法案を先に審議する権利を有していますし、上院は、大統領が指名した各省長官などの官吏の承認、条約の批准承認は上院だけが有しています。
 といいますか、アメリカは大統領は法案の拒否権を持つなど、圧倒的に権力を持っていて、大統領、上院、下院のバランスの上にたっています。
 もともと、党議拘束がありませんから、従前は「是々非々」「あうんの呼吸」で「うまく」いっていたようです。
 国債の上限額などで「大騒ぎ」しています。

 フランスも、大統領の権限が強いですね。
 大統領は、首相任免権による行政権の掌握や、議会解散権等の巨大な権限を有しています。
 もっとも、国民議会には、政府の信任・不信任の手続き、予算法案の審議権がありますから、大統領が右派で首相が左派だったり、大統領が左派で首相が右派だったりします。
 なお、国民議会に優先権があり(憲法改正の場合を除き、両院不一致の場合における最終議決権があります)、上院元老院は主に諮問機構として機能しているにすぎません。
 「ねじれ」は、上院と下院にあるわけではなく、大統領と下院にあります。

 イギリスは議院内閣制です。
 首相は選挙の際に下院院で多数派を取った政党の党首が就きますが、首相は、下院議員である必要があります。
 また「下院の優越」があります。
 予算をはじめとする重要本案は下院議決が最優先されます。
 といいますか、EU離脱の延期の法案などをみていると、貴族院は、あってなきがもののようです。
 上院下院の「ねじれ」はありませんが、下院でしょっちゅうトラブルが起きています。

 ドイツは連邦制で、議院内閣制です。
 大統領に政治的権力はほとんどなく、連邦議会で選任された連邦首相が権力を持ちます。
 連邦参議院は、16州ある各州政府の意思を連邦政府の政策に反映させる議会で、議員は、州政府から、州首相などを議員として派遣します。
 連邦参議院は、州に関連する連邦法案の審議に限定されます。
 「たかがしれている」と思われるかも知れませんが、結構、州に関連する連邦法案は多く、連邦議会の多数派と、地方議会の連邦首相の多数派が「ねじれる」と、政権は、スムーズに動かなくなります。
 政権末期に見られる現象です。
 「ねじれ」は、あまりありませんが、選挙制度は、1つの党が過半数をとれるような仕組みになっていませんから、どのようにして「連立」を組むかで大騒ぎ、「連立」相手が寝返れば、連邦首相の座は危うくなります。

 イタリアは議院内閣制です。
 大統領には、政治的権力はほとんどなく、イタリア下院で選任された首相が権力を持ちます。
 イタリアでは、上下両院がほぼ同等の権限を持ち、両院が同一条文を採択しないと法律は成立しません。このため政権維持のためには、両院で過半数を確保することが絶対的な条件となります。
 選挙では「ねじれ」を避ける狙いで同時に解散するのが慣例となっています。
 つまり、下院だけではなく、上院も解散することができます。
 この点は、「ねじれ」という点からみれば、日本より「まし」といえるでしょう。
 イタリアでは上下両院とも比例代表制が基本で定数は下院630、上院315です。
 下院では、最多得票の政党あるいは選挙連合に過半数の340議席が与えられ、残る議席が他の党に比例配分されます。
 首相は下院で選挙されますから、最多得票の政党あるいは選挙連合は、過半数を有していますから、首相は決まります。
 上院では、州ごとに(一部の宗派除きます)、最多得票の政党あるいは選挙連合に、55%の議席が与えられ、残る議席が他の党に比例配分されます。
 上院が州ごと、となっているのは、憲法57条で「上院議員は州を基礎として選ばれる」と定めているからです。
 これでは、政権が安定するわけはありません。
 かつての日本と同様、首相が「ころころ」かわるわけです。

 日本の制度は、参議院の権限が強すぎること、参議院議員の任期が6年であり、参議院は解散が絶対にないことによります。
 「独裁政権」ができることは難しいですが、「安定政権」ができることは難しいことになっています。
 第二次安倍政権は、衆院選、参院選に連戦連勝で、長期政権となりましたが、これは希です。どちらかで敗北すると、足を引っ張られて首相の座を追われることになります。


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