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雑記帳

生活保護と密告

 生活保護の受給者らが、給付金をパチンコやギャンブルで浪費することを禁じる兵庫県小野市の「福祉給付制度適正化条例」が、平成25年3月27日、市議会本会議で賛成多数で可決、成立しました。

 現在も有効です。

 第3条第1項(一部略)には以下の定めがあります。

「受給者は、偽りその他不正な手段を用いて金銭給付を受けてはならないとともに、給付された金銭を、パチンコ、競輪、競馬その他の遊技、遊興、賭博等に費消し、その後の生活の維持、安定向上を図ることができなくなるような事態を招いてはならない」

 刑事罰はありません。

 また、遊興、賭博等に費消した分を返納する義務もありません。

 第5条第3項には以下の定めがあります。

「市民及び地域社会の構成員は、受給者に係る偽りその他不正な手段による受給に関する疑い又は給付された金銭をパチンコ、競輪、競馬そのほかの遊技、遊興、賭博等に費消してしまい、その後の生活の維持、安定向上を図ることに支障が生じる状況を常習的に引き起こしていると認めるときは、速やかに市にその情報を提供するものとする」

 やはり刑事罰はありません。

 ずっとずっと昔、現在の法テラスがなく、法律扶助協会の扶助制度があったころ(平成19年まで)、私が、弁護士会の法律相談で担当した事件に、次のものがありました。

 依頼者は、私より年齢の高い(当時)単身者の男性、アルコール性肝炎で就労不能、サラ金に生活保護費から、サラ金返済に充てていました。

 当然、自己破産して借金を消しにかかります。生活保護費からサラ金に返済されては貯まったものではありません。

 ということですが、打合わせを朝すると、毎度毎度、酒臭いのです。

「酒を飲まないと眠れない」「昨晩飲んだ酒が残っている」というということでしたが、不愉快なので、夕方打ち合わせにかえました。

 医療費がただですから、寝られないなら、酒を飲むのではなく、医師に睡眠薬を処方してもらうことのアドバイスを考えましたが、よく考えると、睡眠薬と酒を一緒に飲んで、命にかかわりかねませんから、アドバイスせずに(もっとも「寝られない」というのも嘘である可能性もあります)、自己破産の申立をしました。

 家計収支表の「嗜好品費」は正直に金額を書きました。嗜好品費に書くのは、酒とタバコです。

 裁判所も、酒をタバコと勘違いしたのか、見逃したのか、何も言われずに、無事免責決定が出ました。
 飲酒が原因で、アルコール性肝炎に罹患したとして生活保護を受けておきながら、毎日酒を飲んでいることへの注意くらいはあって良さそうなものです。

 不条理ですね。アルコール性肝炎で就労不能で生活保護の受給をし、生活保護費から酒を毎日のように飲んでいるからです。

 問題の条例ですが「受給者は、偽りその他不正な手段を用いて金銭給付を受けてはならないとともに、給付された金銭を、パチンコ、競輪、競馬その他の遊技、遊興、賭博等に費消し、その後の生活の維持、安定向上を図ることができなくなるような事態を招いてはならない」は反対しようがないでしょう。

 「市民及び地域社会の構成員は、受給者に係る偽りその他不正な手段による受給に関する疑い又は給付された金銭をパチンコ、競輪、競馬そのほかの遊技、遊興、賭博等に費消してしまい、その後の生活の維持、安定向上を図ることに支障が生じる状況を常習的に引き起こしていると認めるときは、速やかに市にその情報を提供するものとする」

 不正な受給に関する疑いがあれば、通報する義務を課しても罰則さえなければ問題はないと思います。

 現実に、不正受給は、一般市民の「通報」から発覚することが多いものです。

 遊興、賭博等に費消して、生活の維持、安定向上を図ることに支障が生じる状況を常習的に引起こしているときに「通報」は、いきすぎだとは思います。

 なお、日本人は「通報」「密告」には否定的な考えの人が多いです。

 ドイツ人なんかは、車掌が検札にきて「どなたかご乗車の方は?」と言い、私が黙っていると(ドイツ語ですから、わからなくとも何の不思議もありません)、まわりの誰かから「この日本人が前の駅で乗った」と平気で言います。もちろん、ドイツ語ですから、私がわからないと思っているのでしょう。
 ただ、日本の本や雑誌を見ているわけでもないのに、なぜ私が中国人ではなく日本人とわかったのか疑問ですが・・

 あと、指定日外・指定種類外のゴミ出しなども平気で通報されます。

 ドイツと日本、どちらがいいかは、わかりませんが・・・
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