本文へ移動

2021年2022年バックナンバー

雑記帳

軽貨物車、5年で重大事故8割増 大半が宅配委託の個人事業主

 主に、宅配などで使われる事業用軽貨物車(黒ナンバー車)が原因で、死者や重傷者が出た重大事故が、令和3年までの5年間で8割増えたことがわかりました。
 読売新聞が警察の交通事故データを分析しました。

 事故総数が減る中で目立って増えていて、台数当たりの事故件数は車全体平均の4.5倍にものぼります。

 国土交通省は、ドライバーの大半が宅配を業務委託された個人事業主とみています。
 労働時間の規制がなく、宅配荷物の増加が事故増の背景にあるとみられています。

1人親方

 「1人親方」という言葉をご存じでしょうか。
 建設業などで労働者を雇用せずに自分自身と家族などだけで事業を行う事業主のことです。もともとは、建築業での言葉ですから「親方」という言葉がもちいられています。
 複数の顧客から、注文をもらっているなら、文字どおりの「1人親方」でしょうが、現実には、特定の雇主からの仕事のみをする人も「1人親方」と呼ばれます。
 契約関係は、「請負」ではなく、「請負」「準委任」になります。
 現在では、建築業者だけではなく、宅配ドライバー、IT技術者、塾講師、エステティシャン、健康飲料販売員などにも「1人親方」がいます。

 雇用関係ではありません。
 労働基準法の適用がありませんから、勤務時間の制限はありません。残業手当もでません。
 健康保険は、会社の健康保険ではなく国民健康保険、年金は、厚生年金ではなく国民年金に加入します。健康保険料や厚生年金は控除されません。
 労災保険の適用もありません。建設業の場合は、一人親方労災保険に加入します。他にも、組合があるかも知れません。
 ただ、雇用と違い、失業保険は出ません。
 もちろん、出産休暇や育児休暇はありません。

 解雇の制限はありません。契約期間が経過したら、再び契約を結ぶか、契約終了かいずれかです。
 自営業者ですから、年間1000万円をこえる売上があれば、消費税の納付義務もあります。1000万円以下なら免税です。
 来年度から、インボイス制度が導入されて、消費税を納入しなければならない免税の人もでるでしょう。

 話を戻して、交通事故全体の数は16年以降で約4割減少しており、主な車種別で増えたのは黒ナンバー車と自転車だけで、重大事故に限ると、黒ナンバー車だけが増えていました。
 黒ナンバー車が主たる原因の「第1当事者」(交通事故証明書の当事者欄上段に記載されている運転者)となった重大事故は平成28年(199件)までは減少傾向にあったが、翌平成29年から増え、令和3年は平成28年比で83%増の365件(うち死亡21件)でした。軽傷を含む死傷事故全体でも令和3年は26%多い4616件で、この8割が業務中でした。
 1万台あたりの事故件数も黒ナンバー車が際立ち、令和3年は151.5件と車全体(33.6件)の4・5倍で、軽以外の事業用貨物車(緑ナンバー車、79.9件)と比べても1.9倍でした。

 ネット通販の普及に伴う宅配荷物の急増で物流業界では個人事業主に宅配を業務委託する動きが広がっています。
 黒ナンバー車は、令和3年末で約30万台と平成28年から約7万台増えました。
 黒ナンバー車での運送業は、緑ナンバー車と違って国の許可は必要なく、届け出だけで始められ、新規参入が増えているとみられます。
 しかし、個人ドライバーは、前記のとおり、労働基準法の対象外で、過重労働が広がっている可能性があります。ここが心配です。


TOPへ戻る