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2021年2022年バックナンバー

雑記帳

死体

 死体をご覧になったことがありますか。

 もちろん、病死なら、親族の死体はご覧になっているでしょう。
 「おくりびと」より、死に化粧がなされています。

 変死体はどうでしょう。
 その昔、福島地方裁判所郡山支部の裁判員裁判で強盗殺人罪などに問われた被告人に死刑が言渡されました。
 裁判員を務めた福島県の60代女性が、証拠調べで見た遺体のカラー画像などが原因で不眠症や食欲不振に陥り、「急性ストレス障害(ASD)」と診断されたと主張し、慰謝料など計160万円を求める国家賠償訴訟を、仙台地方裁判所に起こすたことになったそうです。

 証拠調べでは、被害者夫婦の遺体や傷口のカラー画像が目の前のモニターに映し出され、評議では、テーブルの真ん中に犯行に使われたとされた凶器のナイフが置かれ、被告の残忍性の説明を受けたということです。

 裁判員は、「Q&A」に「死体の写真なども見なければいけないのですか」にあるとおり、「判断のために必要がある場合には、死体の写真のような証拠を見てもらうこともあります」となっています。

 最高裁判所は、裁判員の心のケアを巡り、有識者懇談会で、遺体の写真など刺激の強い証拠は白黒にしたり、コンピューターで加工した映像にしたりするなど、裁判員の衝撃を和らげる配慮をしていると説明していました。

 まあ、死刑になるかどうかの事件なら、被害者夫婦の遺体や傷口のカラー画像くらいは見てもらわないと、刑が軽くなってしまうかも知れないという恐れがあったのでしょう。

 そういえば、私は、裁判官任官当時に大阪地方裁判所の刑事部に配属されました。

 当然、被害者の遺体や傷口のカラー写真は見るわけですが、それくらいで精神的に不安になっていては、裁判官などはつとまりません。写真は、臭わないのがいいですね。

 今はどうなっているか知りませんが、私が司法修習していたころは、検察修習の時、生の死体を見るということが義務づけられていました。
 腐敗していない、また、水死体でなければ、ある意味「大したこと」はありません。
 修習生指導係の検察官が「今日の死体は、刃物で刺されたからきれいな死体だ」と、修習生に言っていたのを思い出します。
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