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2021年2022年バックナンバー

雑記帳

日本銀行対ハゲタカファンドの国債を巡る攻防

 一時期、ドルが140円近くになりました。

 ハゲタカファンド(ヘッジファンド)のうちには、主要国の中央銀行で、マイナス金利政策の継続が見込まれるのは日本銀行だけになり、いずれ、物価の上昇を抑えるため、日本銀行は長期金利を上げなければならなくなるとして、日本銀行の金融政策を直接の「標的」とする形で日本国債の空売りを仕掛けました。

 日本銀行は、イールドカーブコントロール(YCC)に基づく無制限の買い入れを通じて10年国債の利回りを低水準(事実上の上限0.25%)に維持することを約束しています。

 もし、日本銀行がこの政策運営の枠組みを撤廃し、ゴールドマン・サックスなどが適正水準とみなす0.60%ないしそれ以上まで10年国債利回りが跳ね上がるなら、空売り取引は思いがけない利益を手にできるという寸法です。

 しかし、日本銀行が現行政策を維持する限り、空売りのコストは耐えることができないほど高まりかねません。

 以前から非常なリスクを伴う日本国債の空売取引ですが、これまでの日本銀行による大規模買い入れを通じて、既に空売りコストはじわじわと上がり続けていました。

 令和4年6月には日本銀行の国債買い入れ規模は月間ベースで過去最大に達し、最も人気がある現物国債の賃借料率は一時1週間で3%まで高騰しました。
 その影響で国債先物の価格もひどく乱高下しました。

 結局、日本銀行は、令和4年7月20日から21日の金融政策決定会合でも超金融緩和が維持されました。

 結局、日本銀行の勝ちでした。
 何もしないまま、ドルが130円近くまで落ちてきたのです。
 アメリカの景気減速のためです。
 これで、何もしないでも、日本銀行の超金融緩和の続行は間違いなくなりました。

 財務省が、令和4年8月4日発表した対外及び対内証券売買契約などの状況によりますと、海外投資家は令和4年7月24日~30日に国内中長期債を1兆2963億円買越しました。
 海外勢による令和4年6月下旬以降の6週間における累計買越額は6兆円を超えました。
 令和4年6月18日までの2週間で売り越した6兆円の国債をほぼ全て買い戻した計算となり、海外勢による国債売りが一巡したことを示しています。

 ハゲタカファンドの、0.60%ないしそれ以上まで10年国債利回りが跳ね上がるなら、空売り取引は思いがけない利益を手にできるという目論見は見事に外れ、空売りした国債現物を購入しなければならなくなりました。

 ハゲタカファンドが空売りした国債現物を買おうにも、日本銀行が買占めてしまっていて、現物が市場にありません。

 ハゲタカファンドが、空売りした国債現物を買おうにも買えないわけですから、空売りした国債を調達することはできないハゲタカファンドもでました。借りられませんし買えませんから。

 ハゲタカファンドのデフォルトなら痛快なのですが、始末書程度のペナルティーですんだようです。

 ハゲタカファンドは、平成16年にも、やらかしています。

 平成15年夏ころより、イラク情勢の影響を受け、ハゲタカファンドは近く円高ドル安が来るだろうことを見越し、円買いを進めていました。
 このため、1ドル=117円程度で落ち着いていた円は高騰し、1ドル=105円まで値上がりしました。

 円安にすべく、日銀砲が火を噴きました。
 財務省は、一日1兆円規模の円売りドル買い介入は休み無く続き、徹底した押下げ介入を実行し、円を適正水準にもどしたのです。
 ヘッジファンドの殆どが殲滅されました。
 一説でによるとアメリカのハゲタカファンド2000社が倒産し、自殺者・行方不明者が多数出たそうです。

 日本国債トレードは「ウィドウ・メーカー(寡婦製造機)トレード」などと呼ばれたものです。
 教訓として「日本銀行には逆らうな」ということでしょう。
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