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2021年2022年バックナンバー

雑記帳

ISDS条項が必要な国

 ISDS条項(Investor - State Dispute Settlement )という制度があります。

 ISDS条項とは、投資受入国の協定違反によって投資家が受けた損害を、国家が、金銭等により賠償する手続を定めた条項です。

 ある国の政府が外国企業、外国資本に対してのみ不当な差別を行った場合、当該企業がその差別によって受けた損害について、相手国政府に対し賠償を求める際の手続きが定められていて、通常、世界銀行傘下の国際投資紛争解決センター(ICSID)などに訴えます。
 通常、国家には免責特権があり、他国の裁判所において、被告とされることのない権利を有していますが、その例外ということになります。
 国際的な投資関連協定でこれを規定する条項は「ISDS条項」と呼ばれます。
 強制力があります。
 FTAなどによく入っていますね。

 これまで日本は25以上の国と投資協定を結んでその中に既にISDS条項は入っています。しかし、日本政府に対する訴訟は1件もありません。
 ISDS条項で訴えられている国は国内法整備が不備の途上国ばかりです。あまり、日本には関係ないという学者もいます。

 結構、ISDS条項で訴えられている国があります。
 韓国です。

 平成30年6月7日、大宇エレクトロニクスの売却過程が不正であるとして、イランのダヤニグループが、世界銀行グループの投資紛争解決国際センター(ICSID)に、韓国政府を相手に起こした仲裁申立により、韓国政府に約730億ウォン(当時のレートで約73億円強)の支払いを命じる判決が下されました。

 韓国の裁判所で請求が棄却されたので、イランのダヤニグループが、ISDS条項に基づき、韓国政府を提訴していました。
 韓国の裁判所の判決が不当であるとの判決です。
 韓国政府は、あきらめが悪く、合意管轄に基づき、イギリスの高等裁判所に判決の取消しを求めていた上訴をしていました。
 令和元年12月23日、韓国政府が、合意管轄に基づき、イギリスの高等裁判所に判決の取消しを求めていた上訴が棄却され、確定しました。

 ダヤニグループは、イランの家電メーカー「エンテックハブ」を所有しており、平成22年に大宇エレクトロニクスの買収をめぐって優先交渉対象者に選ばれたのですが、その後債権団から契約を解除されました。
 ダヤニグループは、この過程で韓国政府による違法な介入があったとしてに仲裁の申立をして、仲裁裁判所は、韓国政府に対し、ダヤニファミリーに730億ウォンを返還するよう命じました。
 ちゃんと返済したかどうかの続報はみあたりません。

 令和4年8月31日、アメリカ投資ファンドのローンスターが韓国外換銀行(現・ハナ銀行)の売却を巡り平成24年に韓国政府を相手取って損害賠償を求めた仲裁申立てで、世界銀行グループの投資紛争解決国際センター(ICSID)は韓国政府に2億1650万ドル(約300億円)の賠償を命じる裁定を出しました。
 ローンスターの請求した46億7950万ドルですが、その一部ですが、300億円は大きいですね。
 ICSIDは併せて、11年12月3日から賠償金の支払いが完了する日までの利息の支払いも命じました。現時点で、1000億ウォン(約100億円)程度になると推計されます。
 合計400億円ですね。
 すべてドル建てですから、ウォン換算の賠償金は膨らんでいくでしょう。

 ローンスターは平成15年にベルギーの子会社を通じて韓国外換銀行の株式を1兆3834億ウォンで取得しました。
 ローンスターは韓国外換銀行を立直らせました。
 本来は、HSBCに売却しようとしましたが、韓国政府の不当な妨害により、売却が送れ、平成24年に韓国・ハナ金融持ち株に3兆9157億ウォンで売却さざるを得ませんでしたした。
 一見、相当もうけているようにみえますが、韓国政府の不当な介入がなければ、もっともうけは大きかったのです。また、ローンスターが立直さなければ、韓国外換銀行がどうなっていたかわかりません。

 ローンスターは、韓国政府が韓国外換銀行の売却に不当に介入したことで46億7950万ドルの損害が発生したとして平成24年11月、ISDS条項に基づきICSIDに仲裁を申し立てました。
 ローンスターは韓国政府の介入により高値で売却する機会を失い、むしろ値下げを余儀なくされたと主張しました。
 韓国金融委員会が正当な理由なく売却承認を遅らせたり、売却価格を引き下げるよう圧力をかけたりし、また、国税庁が恣意的な基準を適用して課税したとの理由です。
 韓国政府は、あきらめが悪く、上訴するようです。

 間違いのないことは、韓国の裁判所の判決が、国際法に照らして誤りであると2件連続で判断されたことです。

 さらに、アメリカのローンスターの別件、アメリカのエリオット、さらに、スイスの会社シンドラーが、韓国政府に対し、ISD条項に基づき法的手続きをとっています。

 エリオットについては、前ムンジェイン政権が、パククネ元大統領の「検察起訴と裁判所の有罪判決」をISDS請求にあたり、エリオット対する客観的証拠として提出しています。

 韓国が、国内の司法制度が未成熟ということについて、今回の朝鮮半島出身者労働者の訴訟で明らかになりました。
 韓国が、ISDS条項が必要な国であるということに間違いはなさそうですね。
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