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雑記帳

ドイツのタクシーにメルセデス・ベンツが多いわけ

 私は、昭和57年(1982年)から昭和59年(1984年)まで、ドイツに留学をしていました。

 いまはそれほどでもありませんが、当時、ドイツのタクシーは9割以上ベンツでした。
 私も、最初はびっくりしましたが、ドイツのタクシーに使われているベンツは安いんですね。
 たしかにEクラスです。

 なぜ、安いのかという理由ですが、ベンツでもディーゼルエンジンの安い商業用バージョンということが一番大きい点でしょう。当時の通貨はドイツ・マルクですが、日本円にして、200万円台から、日本のCクラスのベンツよりもずっと安いのです。

 なお、弁護士は、やくざと間違えられては嫌だということで(ただでさえ、弁護士は「スーツを着たやくざだ」といわれることがあります)、ベンツを購入するなら、SLクラスはもちろん、Eクラスに乗る人も珍しく、普通は、Cクラスに乗る人が多いです。

 また、ドイツで売られているベンツは、あまり「標準装備」がありません。
 ちなみに、日本で売られているベンツは、ドイツのオプションが「標準装備」がついてきて、価格が高くなっています。

 当時のドイツのベンツのエアコンはオプションでした。
 暑いときには窓を開けて走ります。
 窓も、パワーウィンドウなど、日本車では大衆車クラスでも標準装備が当たり前のものがオプションでした。
 手動で、クルクルと手で回して開閉します。
 ただ、子どもが首を挟まれてしまうという危険がありませんね。

 ベンツは、故障が少なくて寿命が長いといえます。
 ただ、他のドイツ車と比較した場合のことで、日本車ほど故障が少ないことはありません。
 タクシー運転手にとっては、ドイツ車を選ぶなら、オペルやフォルクスワーゲンではなく、ベンツということになります。
 BMWとアウディーはブランドイメージを考えて、タクシー向けの安車はつくりません。


 ちなみに、裁判所から派遣された留学生は、裁判所の「えらいさん」の外遊の接待をすることがありました。
 まず、タクシーがベンツであるということに驚かれますね。
 なお、ベンツは、ドイツ国内では、ブランドイメージを考えないようです。

 ゴミ収集車といえば、40年前のドイツのボン市のゴミ収集車はベンツ製でした。いまも、ベンツ製が走っているかどうかは知りません。
 もちろん、何のメロディーも流しません。


 タクシー用のメルセデス・ベンツ(E200d)はディーゼルエンジンです。500万円弱のようです
 一般のEクラスは1000万円弱します。
 2倍ですね。

 またタクシー業界は、メルセデスのアフターサービスを高く評価してきました。修理工場は数多くあり、交換部品は手に入りやすく、古いクルマの整備にも対応する。メルセデスはただ安価にタクシー仕様車を販売するだけでなく、アフターケアも万全だったのです。

 しかし、次期Eクラスに「タクシー仕様車」は存在しないことがわかりました。
 令和4年にに予定されているEクラスのフルモデルチェンジの際、タクシー仕様車は今後用意されないと発表されました。

 当然、タクシー業界からは猛反発の声が上がりました。
 メルセデス側としては、直近4年間でEクラス・Bクラスのタクシー仕様車の売上が75%減少しているからであると説明しています。

 メルセデスとしても、タクシー業界からは完全に撤退するというつもりはないようで、Eクラスの後継を新規開発のEVなどで担う、などといった「様々な可能性を調査中」という表現をするに留まっています。

 今でも、ドイツには、ベンツのほか、フォルクスワーゲンや、トヨタ・プリウスのタクシーが走っています。
 これを機にドイツ国内でもシェアを伸ばしていくかもしれません。
 過去50年間「Eクラス天下」だったドイツのタクシー業界は今、歴史的な岐路に立たされています。


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