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2021年2022年バックナンバー

雑記帳

国民年金・厚生年金統合論

 厚生労働省は、いまは別々に管理している国民年金と厚生年金の積立金の統合を検討しています。

 相対的に財政が安定している厚生年金の積立金を活用し、将来の年金水準が大きく下がる国民年金の底上げを図るのが狙いです。
 ただ、制度の独立性に関わるため丁寧な議論が必要で、令和7年度に国会への法案提出を目指しています。

 公的年金は、1階部分が国民年金(基礎年金)、2階部分が厚生年金になっています。
 財政管理は別々で、それぞれ保険料収入の一部を積立金にして、将来の年金支給に備えています。
 平成29年度末の国民年金の加入者は約1505万人で、平成30年度末時点の積立金は約9兆円(時価ベース)です。
 平成29年度末の厚生年金の加入者は約4358万人で、平成30年度末時点の積立金は約157兆円(時価ベース)です。

 国民年金・厚生年金統合論論が出てきた理由は、自営業者や零細企業の非正規社員などが入る1階部分の国民年金が今後大きく目減りしていくことが、今の年金制度の最大の課題だからです。

 厚生労働省によりますと、国民年金を受け取っている高齢者の年金額は平均で月5万6000円です。
 満額なら6万5000円ですが、保険料の納付が不十分な人は年金額が低くなってしまいます。

 国民年金の加入者には低収入の非正規労働者も多いです。
 平成30年度の保険料の納付率は68.1%にとどまります。
 30年以上前は80%を超えていたが、このところ、おおむね60%台です。

 夫婦2人とも国民年金を満額で受け取る世帯の年金の給付水準は、現役世代の平均収入の36.4%(2019年度)です。
 今後、少子高齢化にあわせて毎年少しずつ給付を抑制して財政のバランスをとるマクロ経済スライドによって給付水準は低下する。2047年度に26.2%まで落ち込む予定です。

 一方、夫が会社員で妻が専業主婦だったモデル世帯が受け取る年金の給付水準は、今は61.7%。マクロ経済スライドによって給付水準は下がるが、それでも2047年度に下げ止まり、50%を確保し続ける見通しです。

 そこで厚生年金と国民年金を統合したり、財政を調整したりすれば、格差を縮めることができます。
 生活保護を余儀なくされる低年金者(無収入市の生活保護水準から年金額を控除した金額が給付されます)が増えることへの危機感は強いものがあります。

 もっとも、実現へのハードルは高いです。
 例えば厚生年金が国民年金を救済することになる点です。2階部分の厚生年金の財源を1階部分に回したり、国費の投入額が増えたりすることがあり得ます。

 国民的な議論が必要となるでしょう。
 というか、サラリーマンとサラリーマンOBを敵に回すことになりますから、政治的に難しいでしょうね。

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