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2021年2022年バックナンバー

雑記帳

弁護士会の法律相談者の減少

 大阪弁護士会は「大阪弁護士会法律相談センター」を運営しています。

 その昔は、大阪弁護士会館などの相談所での相談数が結構ありました。
 私が弁護士登録した平成2年すぎころ、大阪弁護士会の法律相談は、予約で一杯で「来週の何曜日の何時なら予約可能」といわれることも多かったそうです。
 当時、「阿倍野」に出張所があり(現在は廃止されています)、急いで相談したい人は、「阿倍野」の出張所に行かされていました。

 原則、大阪弁護士会の法律相談は、30分5500円の有料です。
 債務整理については、30分という制限がありますが無料です。消費者の債務整理のみです。
 交通事故については、30分という制限がありますが無料です。

 場所・時間とも年々充実していますが、大阪弁護士会の法律相談は大幅に減少しています。

 弁護士は、何件法律相談があろうとも、場合によっては法律相談がなくても、弁護士会から出される日当は一定です。
 何の問題があるのでしょうか。日当が一定なら、事件が少ない方が、時間あたりの報酬が少なくなります。

 現実には、弁護士は、法律相談での相談者から、事件を直接受任することを「期待」していることが多いのです。
 弁護士会の法律相談に来る相談者は、単なる法律相談目的という目的という人もいますが、事件を弁護士に依頼したいが、知っている弁護士がいないことはもちろん、弁護士を紹介してくれる知人さえいないという人も結構います。

 また、相続や、交通事故の被害者なら、自分の勤務している会社の顧問弁護士の紹介を受けることも可能でしょうが、離婚や債務整理などは勤務している会社の顧問弁護士に相談しにくいですね。
 端的にいって、自分が事件を依頼できる弁護士をさがしているという相談者が多いのです。
 ですから、大阪弁護士会の法律相談が減少することは、法律相談での相談者から、事件を直接受任する機会の減少を意味します。

 大阪弁護士会の法律相談が減少している理由は何でしょう。

 1つには、事件数の減少ということがあります。
 弁護士は増加しましたが、事件数は逆に減少気味です。景気が悪いと言うことですね。
 一般事件のうち、貸金などは、相手の資力がなく訴訟を提起するだけ無駄ということがあります。また、全般的に、訴訟を提起するだけの余裕がなくなってきたということもあります。
 離婚など、事件によっては「右肩上がり」の事件もあります。
 経済的に満足している夫婦は「離婚」はあまり考えないようですが、不景気になると離婚は増加する傾向にあります。

 2つめは、インターネットの普及により、簡単な法律相談なら、検索をかければ、弁護士などのホームページに回答が載っているということにより相談者が減少し、また、弁護士の宣伝広告も増えて宣伝広告をしている事務所への相談に流れていることが考えられます。

 3つ目は、法テラス(日本法支援センター)の影響です。
 法律扶助は、現在、法テラスが担当していますが、その前は、財団法人法律扶助協会がしていました。
 法テラスになって国費(税金)が入るようになりましたから、扶助の「資力」「要件」が緩和されました。法律扶助を受けられれば、着手金は「法律扶助基準」となり、「安く」なります。
 法律扶助協会当時は、自己破産などは、生活保護受給者か母子家庭くらいでしたが(資力要件に該当しない人は、「標準料金」の着手金分割でしてくれる弁護士をさがさなければなりませんでした)、法テラスになってからは、「資力要件」緩和のため、着手金が安い「法律扶助」を受けられる人が増えました。
 サラ金関係は、一般法律相談でも無料ですが、着手金・報酬が「法律扶助基準」ですむため、法テラスに相談に来る相談者が多いようです。
 一般事件では、「資力要件」緩和のため、無料で相談が受けられ、弁護士に受任してもらう場合、着手金・報酬が「法律扶助基準」になる「一挙両得」と考える相談者が増えているそうです。
 債務整理系なら、事務員の仕事が大半ですから、「扶助基準」でも「割に合う」可能性があるのですが、「一般事件」は、大抵の弁護士にとって「割に合わない」でしょう。
 他にも理由があるかも知れません。

 現実には、法律相談に出向く弁護士は、法律相談での相談者から、事件を直接受任することを「期待」していることが多いですから、弁護士会での法律相談の減少は、特に、事件の少ない弁護士、紹介者などの少ない弁護士にとって、「頭が痛い」問題のようです。

 もっとも、相談者は、自分の問題について、インターネットで「情報武装」していることが多いようで、本来回答すべき「論点」をのがすと、「頼りない」となって、相談だけで受任に至りません。
 特に、家事事件に「不慣れな」弁護士さんが多いようです。
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