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2021年2022年バックナンバー

雑記帳

イギリス年金基金の損失、最大25兆円に

 トラス首相率いるイギリス政府の減税と、追加の政府借り入れを伴う景気刺激策は、23日に投資家から非常に後ろ向きな評価を受けイギリス国資産が急落しました。

 令和4年9月26日には、ポンドは一時0.9%下落し、1ポンド=1.08ドルを割り込み、1.0766ドルまで下げました。

 イギリス政権の大規模減税策などをきっかけとした金利上昇によるイギリス年金基金の損失は、最大1500億ポンド(約25兆円)になったとみられることが明らかとなりました。

 年金基金は損失に伴う支払いのために、債券や海外株式を売却しました。

 金利上昇による打撃を受けたのは「ライアビリティー・ドリブン・インベストメント(LDI」という運用戦略をとる年金基金です。
 デリバティブによる損失が、令和4年8月上旬からの累計で1250億ポンドから1500億ポンドに上るとしています。

 イギリスの年金基金がファンドを通してLDIの運用戦略をとる場合、2~4倍のレバレッジをかけるのが一般的とされています。
 損失がかさんで取引相手方の金融機関から、マージンコール(追証)を突きつけられました。
 追証の支払いのための現金を捻出するために、保有資産の多くを占める物価連動国債を含めた国債、社債や海外株式の売りに動きました。

 イギリス投資協会によるとイギリス国でのLDIの運用規模は令和2年時点で約1.5兆ポンド(約250兆円)と、平成23年の0.4兆ポンドと比べて4倍近くまで膨らんで、イギリスの機関投資家全体の運用資産の4割を占めるまでに広がっています。

 イギリス国債を考えてみましょう。

 イギリス国債を売却する→イギリス国債価格が下がる→保有しているイギリス国債価格も下がる→追証を要求される→イギリス国債を売却する
 という悪循環です。

 なお、イギリス政府の減税と、追加の政府借り入れを伴う景気刺激策は日本では危険でしょうか 。

 第一生命経済研究所の首席エコノミスト永浜利広氏によれば「英米のように需給ひっ迫によりインフレ率が目標の+2%を大きく超えてしまっている国は、財政出動が限界にきているといえるでしょう。」「事実、IMFのGDPギャップで比較すると、米国では2021年時点、イギリス国でも2022年時点で需要超過になっており、需要超過によりインフレ率が加速しています。」「一方の日本では、2022年時点でも大幅な需要不足が続いています。特に日本の場合、1990年代後半以降の内閣府版GDPギャップと消費者物価インフレ率との推移を見ると、インフレ率を+2%程度に安定させるにはまだ+30兆円の需要拡大余地があると試算されます。」としています。

 イギリスは、需給ひっ迫によりインフレ率が目標の+2%を大きく超えてしまっていますから、景気刺激策はとれません。

 日本は、これとはちがい、需要が足りませんから、インフレ率を+2%程度に安定させるにはまだ+30兆円の需要拡大余地があると試算されるということです。
 政策金利の引き上げにより、景気に冷や水をあびせることない方がよいのかと思います。
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