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雑記帳

ドイツ首相、原子力発電全3基稼働可能に 電力安定へ方針修正

 ドイツのショルツ連邦首相は、令和4年10月17日、国内にある原子力発電所の全3基を令和5年4月まで稼働可能な状態にする方針を固めました。
 これまでは2基だけを対象とし、残る1基は令和4年内に運転を終える予定でした。

 ドイツ政府は令和4年9月、南部にある「イザール2」と「ネッカーベストハイム2」の原子力発電2基を非常用予備電源として活用する方針をまとめたばかりです。
 残る1基で西部にある「エムスラント」は年内の運転停止を目指していました。

 ロシアがウクライナに侵攻する前、ドイツ政府は、令和4年末までに「原子力発電ゼロ」を完了する計画でした。
 東京電力福島第1原子力発電の事故を受け、CDU/CSUとSPDの連立によるメルケル政権時代の令和23年5月に脱原子力発電を決めてから段階的に廃炉を進めてきました。

 しかし、侵攻後にエネルギー供給が不安定になると、ドイツ国内では最後の3基の運転延長を求める声が広がりました。

 ドイツDPA通信の世論調査では、令和6年以降の原子力発電稼働に前向きな回答が全体の56%に達しました。
 「原子力発電を無期限で稼働すべきだ」との回答も19%を占めました。

 ショルツ政権は中道左派のドイツ社会民主党(SPD)と原子力発電に慎重な環境政党の緑の党、産業界に近い自由民主党(FDP)の3党が連立を組んでいます。
 緑の党が、令和5年4月までの脱原子力発電を訴えるのに対し、FDPは全3基を令和6年まで稼働するよう主張するなど政権内の対立も目立っていました。

 ドイツではロシアとつながるパイプライン「ノルドストリーム」を通じたガス供給が途絶えたままです。
 石炭火力発電の稼働を増やすなど緊急措置を打ち出したものの、電力需要が高まる冬場に電力供給が不安定になるリスクを完全には排除できません。
 原子力発電の一時的な運転延長を視野に、電力の安定供給に万全を期すことになります。
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