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2021年2022年バックナンバー

雑記帳

編綴(ファイリング)方式

 裁判所の記録は、平成13年までは、家庭裁判所を除いて「B4縦横書き袋とじ」という独特の様式が残っていましたが、現在は、「A4横書き」という方式に統一されています。

 ちなみに、「A3」「A4」などは、ドイツ工業規格(日本のJISにあたります)に起源があるらしく世界的な規格、「B4」「B5」などは、「和紙」に起源をもつ、日本独特の規格のようです。

 これにあわせて、記録の編綴(ファイリング)方法も、従前の日経新聞などのように「右から左に読んでいく」という方式から、英字新聞の「左から右に読んでいく」という方式になりました。

 一般の民事訴訟の裁判記録は、第一分類(訴状・答弁書・準備書面など)、第二分類(証拠関係)、第三分類(その他。委任状、資格証明書など)にまず分類し、古いものから新しい順番に「下に下に」と綴っていきます。
 破産記録などは、分類せずに、古いものから新しい順番に「下に下に」と綴っていきます。

 もちろん「わざわざ古い書類をはずして、新しい書類を下に置き、その上に古い物書類を綴り直す」ということはありません。
 ファイルの「表表紙」(プラスチック製の「ひも」の根本がついている表紙)の下に新しいものから下へ下へと書類を綴り、綴り終えたら「裏表紙」を重ね、プラスチック製の「ひも」のストッパーで留めます。
 新しい書類を綴るときは、ストッパーと裏表紙をはずし、従前の書類の下に、新しいものから下へ下へと書類を綴っていきます。
 新しい書類を綴るときには、一度、記録を「裏返して」綴るという方法をとることになります。
 言葉にすると難しいですが、綴り方として合理的なものです。

 裁判所方式の綴り方に慣れてしまいますと、それが「唯一無二のファイリング方法」かのように思ってしまいます。

 しかし、保険会社の記録は(会社にもよるのでしょうが)、プラスチック製の「ひも」の根本がついている表紙を「裏表紙」として、書類を綴って、綴り終えたら「表表紙」を重ね、プラスチック製の「ひも」のストッパーで留めています。

 新しい書類を綴るときにも、記録を「裏返して」綴るなどということはしません。
 古い書類は下に、新しい書類は上に綴られていきます。
 古い書類は、あまり使用しない、新しい書類は、よく使用するという考えからのようです。
 綴り方として、ある意味、合理的なものです。
 新しい書類を編綴するときに、記録を「ひっくり返す」必要はありませんし。

 しかし、保険会社の方法だと、書類が複数の場合になると「やっかい」です。
 ある提案書が3枚あり、その回答書が3枚ある時には、提案書が下で、4枚目、5枚目、6枚目と見た上で、上にある回答書が上で、1枚目、2枚目、3枚目と「いったりきたり」しなければなりません。

 裁判書の記録編綴方式ですと、提案書が上で、1枚目、2枚目、3枚目と見た上で、下にある回答書を、4枚目、5枚目、6枚目と順に見ていくことができます。

 また、外資系の金融機関などは、保険会社の方法をとっているらしく、取引履歴などは、12月分が1枚目、2枚目、3枚目、11月分が4枚目、5枚目、6枚目、10月分が7枚目、8枚目、9枚目と続いていて、10月分の7枚目、8枚目、9枚目を読んだあとに5枚戻って、11月分の最初の4枚目、5枚目、6枚目、また、5枚戻って、12月分の1枚目、2枚目、3枚目と、ややこくしくて仕方ありません。
 裁判書の記録編綴方式ですと、1枚目から9枚目に順番に並んでいますから、戻る必要はありません。

 一度、家庭裁判所の記録の中に、日本の銀行の取引履歴と、外資系金融機関(具体的には「シティバンク」)の取引履歴が混在していたのですが、家庭裁判所堺支部の裁判官(家事審判官)が、外資系銀行の取引履歴をみて、「いったいどうなっているのだ」と「かんしゃく」をおこしていました。

 わかっていましたが、調査嘱託により送付された文書を書証として提出するとき、勝手に、並替えるわけにはいきません。

 「最初から最後まで記録をすべて見なければ何もできない」裁判所と、「古い記録は古い記録。最新のものこそ重要」という保険会社や外資系金融機関、どちらが「合理的」かわかりませんが「慣れ」の問題かも知れません。
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