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2021年2022年バックナンバー

雑記帳

建物の耐震基準

 現在、大阪地方裁判所本館において、本格的な耐震工事が実施されています。
 部屋が、次から次に変わるので、弁護士も大変です。

 現在の建物の耐震基準は昭和56年(1981年)に施行されました。
 もちろん、それ以前の旧基準の建物も従来通り居住できます。
 ただ、東日本大震災などの大規模地震で、老朽化した建物に大きな被害が出ていることから、国は旧基準の建物の建替えを促進しています。

 平成25年には、デパートやホテルなど不特定多数の人が集まる大規模施設に耐震診断を義務付ける改正耐震改修促進法を施行しました。
 自治体は耐震基準に満たない施設名を公表し始め、事業者に改修や建替えを促しています。

 一方、分譲マンションは区分所有者の合意形成が難しいとされています。
 建替えがなされた一部の事例は、立地の良さなどで収益性が見込め、民間の不動産会社が事業に参加するケースなどに限られていたとされています。
 マンションは、入居時に、あるマンションには、似たような所得や資産の人が住み始めるのですが、しばらくすると、所得が増えて資産が増えた人と、所得が減り資産もなくなる人に分化していきます。
 所得が減り資産もなくなった人が、耐震基準に満たないマンションであっても、改修や建替えに応じることは難しくなってしまいます。
 高齢者が多いマンションでは資金の確保も難しく、全世帯合意はハードルが高いことになります。

 1981年(昭和56年)の建築基準法改正で「震度6強~7でも倒壊しない」耐震性が義務化されました。
 なお、1981年(昭和56年)6月1日以降に完成した住宅であっても、古い基準で建てられた住宅である可能性もあります。
 建築確認が、1981年(昭和56年)6月1日より前になされていれば、旧耐震基準である可能性があるわけです。
 目安として、1982年(昭和57年)以降に完成した住宅であれば、新しい耐震基準で建築された可能性が高いですが、マンションであれば、工期がもっと長いですから、1983年(昭和58年)以降と考えておいた方が安全です。
 中古マンションの取引事例から耐震基準変更前と後との価格差は、一目瞭然となります。
 売買価格は、旧基準のマンションは捨値となります。
 ただし、賃貸は、あまり気にしない人が多いのか、旧基準のマンションであっても、さほど差はありません。

 大阪地方裁判所の本庁舎が、1981年(昭和56年)6月1日以前に建築されたことに間違いはありません。
 私が、大阪地方裁判所判事補に任官したのが1980年(昭和55年)4月7日でした。

 そのときは、新築と思えるような建物ではありませんでしたから、旧耐震基準の建物だったのでしょう。
 なぜ、今まで放置していたのかが不思議といえば不思議です。
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