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雑記帳

元慰安婦の名誉毀損で大学教授が罰金刑

 平成29年10月27日、ソウル高裁は、慰安婦問題の学術研究書「帝国の慰安婦-植民地支配と記憶の闘い」で慰安婦を「売春婦」などと表現し、元慰安婦の女性の名誉を毀損したとして、著者の朴裕河・世宗大教授を罰金1000万ウォン(約95万円)で処罰しました。

 朴教授が同書で慰安婦を「自発的な売春婦」「日本軍と同志的関係にあった」などと書き、侮辱したとして、平成26年6月に元慰安婦らが刑事告訴していました。

 検察では、「元慰安婦は性奴隷同様の被害者で、日本軍に自主的に協力したわけではない」とし「虚偽の内容で被害者の名誉を毀損した」としています。

(韓国刑法)
第307条(名誉毀損)
1 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、1年以下の懲役若しくは禁錮又は250万ウォン以下の罰金若しくは拘留に処する。
2 公然と虚偽の事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、2年以下の懲役又は500万ウォン以下の罰金若しくは拘留に処する。
第308条(死者の名誉毀損)
公然と虚偽の事実を摘示し、死者の名誉を毀損した者は、1年以下の懲役若しくは禁錮又は500万ウォン以下の罰金又は拘留に処する。 
第310条(違法性の阻却)
第307条第1項の行為が、真実の事実であり、専ら公共の利益に関するときは、罰しない。

(日本国刑法)
第230条
1 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。 
2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。 
(公共の利害に関する場合の特例) 
第230条の2
1 前条第1項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。 
2 前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。 
3 前条第1項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない

 微妙に異なっています。

 日本の刑法は、摘示された事実が、虚偽であろうが真実であろうが罰せられます。
 あとは、公共の利害に関する事実であるかどうか、目的がどうであるか、真実がどうであるかにより処罰されるかどうかが定まります。

 もっとも、日本の検察官が、名誉毀損で起訴をすることは珍しいことですし(多くは、民事訴訟で争われることは、ご存じのとおりです)、大学教授が、学術論文に記載したことで名誉毀損の訴追を受けることはありません。
 といいいますが、民主国家なら、当たり前の話です。

 産経新聞前ソウル支局長の起訴といい、朴裕河といい、韓国の言論の自由のレベルがわかる象徴的な例ですね。

 朝日新聞は「韓国の自由の危機」というタイトルの平成27年12月21日付社説で「慰安婦問題をめぐり、当事者や支援者に、さまざまな意見があることはわかる」と前置きをした後「事実の正否は、検察が判断を下してはいけない」とし「歴史の解釈や表現をめぐる学問の自由な営みを公権力が罰するのは、きわめて危険なことである」と書きました。

毎日新聞も、平成27年12月21日「歴史研究に対する介入を憂慮する」というタイトルの社説で「感情論や政治性を排除した歴史研究の自由を保障することは、将来の世代のためにも重要である」とし「韓国の憲法が「学問・芸術の自由」を明記しているのは、そのような認識に立っているためではないか」と書いています。
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