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2021年2022年バックナンバー

雑記帳

嫌悪物件

 京都府長岡京市の男性(41)が、自分の妻の遺体を、他人の家の敷地に埋めたと供述し、京都府警は死体遺棄の疑いで男を逮捕しました。
 2年前だそうです。

 男は工務店経営の大工で、民家を建築中に遺体を車で運び入れ埋めたということです。
 新築の家に住んでいた家族は死体が埋まっていることを2年ほど知らずに暮らしていたことになります。

 土地・家屋の売買の時、そこで「殺人事件」や「自殺」があった場合はどうでしょう。
 確かに、騒音、振動、異臭などはしません。
 普通の土地、普通の家屋です。
 しかし、目的物にまつわる嫌悪すべき歴史による心理的な欠陥があることになります。

 従って、「殺人事件」や「自殺」を知らずに、土地・建物を購入した買主は、物理的な欠陥でなくても、不動産に「隠れた瑕疵」(目にみえない欠陥)があるものとして、売買契約を解除できると解釈されるのが通常です。また、賃貸借契約の場合は、賃借人は、賃貸契約を解除できると解釈されています。

 ですから、不動産業者は、重要事項説明として、買受希望者に「殺人事件」や「自殺」という事情を説明し、不動産売買、賃貸の仲介をしなければなりません。
 仲介業者がいない場合は、売主・賃貸人が、説明しなければなりません。

 ちなみに、売買された土地の建物において、8年前に殺人事件があって、建物が取り壊されて、土地の売買がされた場合に、売買契約は解除できず、5%の代金返還できるににとどまるとした大阪高等裁判所の判例(判例時報1971号130頁)があります。

 ガレージに死体の埋まっていた土地建物に住み続けるのは嫌ですね。
 ものすごく迷惑な話です。
 土地建物の写真もネットにあがっています。

 もっとも、売ろうとしても、買主は現れないでしょう。
 誰も、そんな物件などいりません。

 かといって、犯人に損害賠償訴訟をすれば勝訴はするでしょうが、賠償能力はないでしょう。
 公的な補償制度もありません。

 被害者は泣き寝入りです。
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