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2021年2022年バックナンバー

雑記帳

北朝鮮、仮想通貨3億ドル奪う

 国連安全保障理事会にて、対北朝鮮制裁の履行状況を調べる専門家パネルが、令和3年3月にも公表する最終報告書の全容が明らかになりました。

 北朝鮮が軍事情報や外貨の獲得を求めてイスラエルなど数十の防衛企業や組織にサイバー攻撃をしかけたと指摘しました。
 令和元年から令和220年にかけ仮想通貨(暗号資産)交換業者などへの攻撃で推計3億1640万ドル(約333億円)を奪ったと明らかにしました。

 新型コロナウイルスの感染拡大下の経済苦境のなか、制裁逃れを続けている実態が浮き彫りになりました。

 国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会に提出された報告書案は、理事国の議論や修正を経て公表されます。
 法的拘束力はありませんが、報告を受けて安全保障理事会や加盟国などが違反する団体や個人に新たな制裁を科すことがあります。

 北朝鮮当局が主導するサイバー攻撃では、ビジネス向けSNS)で著名な防衛・航空宇宙企業の人事担当者になりすまし、関連企業の従業員に接近し、電話による会話やテキストメッセージで信頼を獲得した上で、マルウエアを添付した電子メールをターゲットに送る手口が使われました。

 サイバー攻撃による仮想通貨の違法な取得も続いています。
 令和2年9月に起きた仮想通貨交換事業者へのハッキングでは約2億8100万ドルの仮想通貨が盗まれました。
 令和元年の2件の仮想通貨交換事業者へのハッキングでは、盗んだ仮想通貨を他種類の仮想通貨に替えることで追跡を困難にする「チェーンホッピング」と呼ばれる手法が使われました。
 北朝鮮は盗んだ仮想通貨を、中国の店頭取引(OTC)トレーダーを通じて交換していました。1件目の被害額は27万2000米ドル、2件目は250万米ドルでした。

 さらに、新型コロナ下で国境が封鎖されるなか、北朝鮮が外貨取得目的で海外に派遣した出稼ぎ労働者が送還の期限を過ぎても国外で働き続けていることもわかりました。
 観光客や学生ビザで入国し、建設、芸術、健康、スポーツ、ケータリングやITなどの分野で活動を継続しているそうです。

 北朝鮮は海上で積み荷を移し替える「瀬取り」の手口で、少なくとも410万トンの石炭及びその他の禁止鉱物を中国に輸出しました。
 安全保障理事会の制裁決議は北朝鮮による石炭の輸出を禁じています。
 貨物の大半は中国の寧波・舟山地域などに送られています。
 令和2年には舟山群島周辺でも船舶の往来が増加しています。

 安全保障理事会が定める制限を大幅に超える量の石油精製品を密輸入する制裁違反が続いていることも確認されました。
 瀬取りによる石油精製品の輸入は令和2年1月~9月だけで、平成29年12月の安全保障理事会決議が定めた年間供給上限の50万バレルの数倍にのぼります。

 制裁逃れを目的にした中国企業との合弁事業も確認されました。
 合弁会社を通じて豚の養殖や砂の採掘を行っていた疑いがあります。

 報告書案は北朝鮮が制裁をかいくぐり、高濃縮ウランの生産を含む核・ミサイル開発計画を継続しているとも強調しました。
 軽水炉施設の建設や各施設の修理などを実施し、南部平山(ピョンサン)ウラン鉱山の施設の近代化や新たな建設に取り組んでいることが確認されました。

 北朝鮮は年に7キログラムのプルトニウムの生産を可能とし、既に60キログラムを保有している可能性が高いとのことです。
 弾道ミサイル開発では、大陸間弾道ミサイル(ICBM)は大きさからして核兵器を搭載できる可能性が非常に高いと結論づけました。
 中距離および短距離弾道ミサイルにも核爆弾を搭載できる可能性があるとしました。

 北朝鮮が令和2年にイランと長距離ミサイル開発をめぐり協力していたことも判明しました。
 イランの研究センターがロケットの打ち上げで北朝鮮のミサイル専門家から支援を得ていて、北朝鮮はバルブや電子機器、地上でのミサイル実験のための測定装置などをイランに輸出していたということです。

 「ならずもの国家」そのものですね。
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