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2021年2022年バックナンバー

雑記帳

日本人の英語下手

 その昔、関西ローカルのテレビ番組で、阪神OBの川藤幸三氏が、外国人選手に英語でインタビューという企画がありました。
 通訳もいますし、選手も日本語をある程度話しますから、ある意味「ショー」です。

 川藤氏が「ナウ イヤー」と言い、みんなが、何をいっているのだろうと思ったのですが、川藤氏が「だから、今年」と言うのを聞いて、外国人選手が「this yearですね」と答えていました。
 川藤氏は、「今」=「ナウ」、「年」=「イヤー」で、「ナウ イヤー」と言ったようです。

 別の話ですが、「イッテQ!」という番組で、現在話題の出川哲朗が、ニューヨークマンハッタン島で、道行く人びとに、国連本部の道順を聞くために「ワールド・ホームセンター」や「ワールド・カントリー・カントリー・メニ・メニ・メニ・センター」と聞いて、誰にも伝わらなかったという場面がありました。
 マンハッタン島にいるわけですから、「United Nations Headquarters」とは言わないまでも、「United Nations」で通じますね。

 自由の女神(Statue of Liberty)を、「フリー・ウーマン」「フリー・ホワイト・ドール」と聞きまくったら、自由の女神のことだと「察した」アメリカ人がいました。大したものですね。
 「Statue of Freedom」ではなく「Statue of Liberty」というのは、フランスから送られたからでしょうか。
 「freedom」と「liberty」はともに「自由」ですが、前者はゲルマン系のイギリスの固有語、後者はラテン系のフランス後系の外来語です。
 エッフェル塔で有名なエッフェルの作で、フランスからの贈り物です。

 こういう例は極端としても、日本は大学を出ていても、英語ができない人が多いです。
 どういう事情が影響しているのでしょうか。

 まず、日本は、タイや韓国と同じく、アジアの国々のうち欧米列強の植民地とならなかった希有な国です。
 インド人やフィリピン人は、英語をしゃべれる人が多いですが、それが「幸せな歴史」によるかどうかは疑問です。

 次に、日本語は、英語と文法が全くかけ離れています。
 ドイツ人の多くが英語をしゃべれるというのは、文法や単語が似ていることが最大の要因です。

 あと、あまり言われませんが、英語の単語の意味・使われ方と、ドイツ語の単語の単語の意味・使われ方がほぼ同一というものが多いですから単語を置き換えるだけですむという場合が多いのに対し、英語の単語は日本語訳すると多くの意味で訳され(辞書に嫌と言うほど訳語が並んでいます)、逆も同じですから、英単語と日本語の単語は、1対1になっておらず、適切な単語を選択して読んだり聞いたりし、適切な単語を選択して書いたりしゃべったりしなければなりません。

 日本人が英語が苦手なのも、ある意味当然かもしれません。

 日本語と、文法単語ともに似ている言語はありません。
 どの外国語も難しいのです。

 なお、欧米諸国の人にとって、日本語を話すのは、さほど難しくないそうですが、漢字2000の漢字とひらがなカタカナを覚えるのが大変なようです。

 また、日本語で大学教育を受けられます。
 意外に思われる方が多いかもしれませんが、大学教育を母国語で受けられない国もあるのです。
 他人事ではなく、日本も、東京大学が「帝国大学」と呼ばれた時代(「東京帝国大学」の前の呼び名。京都に帝国大学ができることになり、区別するため「東京帝国大学」となりました。東京高等裁判所とはいいますが、東京最高裁判所とはいいません。1つしかなければ地名をつける必要はないのです)、英文学でもないのに、授業を英語でしていた時期があったようです。

 ある概念をあらわす「言葉」が必要です。日本の場合は、「漢字」を使って「言葉」をつくりました。中国語の抽象語は、日本からの再輸入品で、日本でつくられた「漢語」がなければ抽象的な話はできません。

 法律家は、日本国内の仕事をしている限り、外国語を勉強する必要もありません。
 裁判所法74条は「裁判所では、日本語を用いる」、民事訴訟154条1項には「口頭弁論に関与する者が日本語に通じないとき、又は耳が聞こえない者若しくは口がきけない者であるときは、通訳人を立ち会わせる」、民事訴訟規則138条は「外国語で作成された文書を提出して書証の申出をするときは、取調べを求める部分についてその文書の訳文を添付しなければならない」とそれぞれ定めています。

 裁判官も弁護士も、一般的にいって、外国語が全くできませんという方が多いです。
 ただ、医師は、研究職でなくとも、英語の文献を読む必要があるようで、英語が「しゃべれる」かどうかは別として、読むことができる人は多いです。

 外国の本も、日本語で簡単に読めます。
 外国語の文章も、人口1億2000万人、経済的に豊かとなれば、日本語訳の本は続々出版されます。
 ちなみに、小さなヨーロッパの国、例えばオランダ語の翻訳本は少ないそうです。
 オランダ人は、ドイツ語と英語がしゃべれるのが、ある意味当然です。
 そうでない小国は気の毒ということになります。

 日本人は、英語が話せなくても仕事ができます。
 日本は小さな国と思っている方も多いと思いますが、結構、内需が大きいので、日本だけで商売をしていても、それなりに「もうける」ことは可能です。
 外交官、パイロット等の航空関係者、貿易に携わる人、ホテル等観光に従事する人くらいでしょうか。

 外国旅行も、ツアーに参加すれば、コンダクターがやってくれます。
 高級ホテルでは、日本語を話せる従業員もいます。

 必要がなければ、英語が上達しないのも当然かと思います。

 ちなみに、ドイツ人は比較的英語が下手です。
 私が留学したとき、英語がしゃべれないのは「50歳、60歳以上の人」「あと30年から40年もすれば全員英語がしゃべれるようになる(しゃべれない人は高齢で死んでしまう)」とよく聞きました。
 そのときは、そんなものかと納得していましたが、今ドイツに行くと、全くの全くの嘘だったということがわかります。
 ドイツは大国ですから、ドイツ語だけでも生活していけます。
 もちろん、日本に比べれば、格段に英語を話す人が多いということは当然です。特に、インテリ層は、まず、英語を流ちょうにしゃべります。
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