本文へ移動

2021年2022年バックナンバー

雑記帳

当事国

 平成28年7月12日、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所は、南シナ海に対する中国の領有権主張や人工島の建設などが国際法に違反するとして、フィリピンが中国を相手に提訴した裁判で、中国の主張に法的根拠がないと判断を示しました。
 常設仲裁裁判所は、スプラトリー諸島(南沙諸島)を構成する地物について、その全てが国連海洋法条約(UNCLOS)上の「岩」もしくは「低潮高地」であり、「島」は存在しないとの判断を下しました。

 つまり、スプラトリー諸島(南沙諸島)には、「岩」もしくは「低潮高地」はあっても、「島」は存在しないということです。
 「岩」は領有権を主張できますが、EEZ(排他的経済水域。 Exclusive Economic Zone)はありません。
 「低潮高地」は領有権を主張できません。

「岩」については、領海(基線から最大12海里(約22.2km)のみ、中国が埋立てているのはすべて「低潮高地」ですから、中国は、領土の主張は全くできないことになります。

 中国は南シナ海の90%に対する領有権を主張していますが、周辺国も海域内の島や岩礁の領有権を主張しています。

 常設仲裁裁判所は、南シナ海には、「岩」があるだけで「島」はなく、「島」以外の岩礁は「低潮高地」として、領有権の対象とならないと判断したことになります。

 当時の岸田外務大臣は、平成28年7月25日、ラオスの首都ビエンチャンで、中国の王毅外務大臣と会談しましたた。

 当時の岸田氏外務大臣は中国の王毅外務大臣に対し、南シナ海での中国の主権主張を否定した仲裁裁判の判決の順守などを求めましたが、中国の王毅外務大臣中国側は判決を受け入れないとする従来の立場を説明し、「平行線」に終わりました。

 当時の岸田外務大臣は、仲裁裁判所の判決について、「判断は最終的であり、(中国を)法的に拘束する。緊張を高める行動を控えるべきだ」と述べました。
 中国メディアによると、王外務大臣は、「日本は南シナ海問題の当事国ではない。日本は故意に問題をあおりたて続けるべきでない」と反論したそうです。

 仲裁裁判所の判決は、フィリピンと中国ですから、裁判の当事国ではありません。
 それは正しいです。

 しかし、問題は、スプラトリー諸島(南沙諸島)の岩や岩礁の領有権を主張していないから「南シナ海問題の当事国ではない」という王外務大臣の主張は正しくありません。
 
 中国が領有している「岩」はありません。
 中国が埋め立てている岩礁は、「低潮高地」ですから、それに何をしたところで、領有権は生じません。
 つまり、単なる「海」です。

 当然の話、海なら、船舶等が自由に航行できますし、上空を飛んでも何の問題もありません。
 ですから、領有権の主張をしていないからといって、日本が当事者でないとはいえません。アメリカも同様です。

 特に、日本の場合、スプラトリー諸島(南沙諸島)は海上輸送の大動脈となっています。
 船舶等が自由に航行できるか否かは大問題で「南シナ海問題の当事国中の当事国」です。
TOPへ戻る