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2021年2022年バックナンバー

雑記帳

日本のアフガン脱出の試み

 令和3年8月31日、アメリカのアフガニスタンでの撤退期限がきました。
 アフガニスタンの政府軍は、実質的に戦闘する意思ははく、タリバンが実効支配する模様です。

 日本は、邦人保護という名目で、令和3年8月26日までに、カブール空港に自衛隊輸送機を飛ばしました。

 ただ、タリバンが勢力を得る前に、危険を察知して、日本大使館は、アフガニスタン脱出を希望している邦人を含め、大使以下大使館員を含めて、首都カブールを脱出していました。

 自衛隊法84条の4は、以下のとおり定めています。
 「防衛大臣は、外務大臣から外国における災害、騒乱その他の緊急事態に際して生命又は身体の保護を要する邦人の輸送の依頼があつた場合において、当該輸送において予想される危険及びこれを避けるための方策について外務大臣と協議し、該輸送を安全に実施することができると認めるときは、当該邦人の輸送を行うことができる」

 イランイラク戦争の時に、自衛隊は救出に行けない、日本航空と全日空は断るということで、邦人は、親日国であるトルコのターキッシュエアラインズが救い出してくれました。

 このことによる反省から、自衛隊法が改正されました。
 ただ「当該輸送を安全に実施することができると認めるときは」という限定が付いています。
 つまり戦闘地域には行けません。

 当時の小泉首相が、イラク復興支援特措法が定める「非戦闘地域」の定義について当時の民主党岡田代表からの質問に対し、「自衛隊が活動している地域は非戦闘地域だ」との説明を繰返したというのは有名な話です。

 アフガニスタン在留の日本人のうち、国外への避難を求めたのは、共同通信社の記者1人でした。
 国際NGOで働く人など5名が自分の意思でアフガニスタンにとどまることを拒否したそうで、無理矢理連れて帰るわけにはいきませんから、アフガニスタンにとどまりました。

 日本は、アフガニスタンに適法に在留している邦人すべてを把握しています。アフガニスタン脱出を希望した邦人はすべて国外の安全なところに避難しています。

 なぜ、300人も輸送できる輸送機を派遣したのでしょうか。

 日本大使館に勤務していたアフガニスタン人やその家族を救出するためです。
 日本大使館に勤務していたアフガニスタン人が残されると、タリバンから迫害される恐れがあるからです。
 日本は、もちろん、アフガニスタンに自衛隊を送っていませんが、逆恨みによる迫害が懸念されます。
 単なる迫害ならともかく、タリバンのことですから、処刑するかも知れません。

 1人でも邦人を救出すれば法律上問題ないのかもしれませんが、本来の法人保護の目的からすると、アフガニスタンに政府にちゃんと届出けている邦人は10人未満ですから、300人も輸送できる輸送機を派遣する必要は無かったですね。

 日本大使館に勤務していたアフガニスタン人やその家族は救出できませんでした。
 救出は、以下の手続きが必要です。

1 退避希望者の自力に多くを依存する首都カブールの国際空港までの移動
2 タリバンの出国許可と米軍のセキュリティチェックのある2つのゲートの通過
3 自衛隊の本人確認を経て、自衛隊機に乗り込んでのアフガニスタンからの出国
4 隣国パキスタンで民間機に乗り換えての日本への避難
5 日本への入国

 カブール空港はアメリカ軍が守っていますから、自衛隊はカブール空港までいけました。
 ただ、空港外に行くのは難しいですね。アメリカ軍についてきてくれというわけにはいきません。

 自衛隊は「当該輸送を安全に実施することができると認めるときは」という制限付きですから、いつ襲撃されるかもしれない空港外に行くことはできませんでした。
 邦人救出なら格別、アフガニスタン人を救出するために自衛隊員が殉職するということは、日本の世論が許さないでしょう。そもそも、自衛隊員が戦闘行為をすることは予定していません。撃たれて、正当防衛で撃ち返すといっても、最初の犠牲者がでてしまいます。

 新型コロナウィルスにより政権の基盤が弱くなっているところに、アフガニスタン人を救出するために自衛隊員が殉職したとの報道がなされるのはまずいですね。

 自衛隊は撤収しました。
 ただ、うまくいかなかったのは、日本大使館に働いていたアフガニスタン人と家族の救出です。
 また、交渉での救出の道も残っています。
 タリバンにとって、「日本大使館に勤務していたアフガニスタン人やその家族」は人質して使えると考えているかも知れません。

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