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雑記帳

朝鮮半島出身の労働者、三菱重工の債権差押さえ申立てを取下げ

 旧朝鮮半島の労働者の申立により、水原地裁・安養支部は、平成30年に三菱重工業に旧朝鮮半島の労働者への賠償を命じた確定判決に基づき、令和3年8月8日、三菱重工業を債務者として、韓国の会社であるLSエムトロンを第三債務者として、代金債権8億5000万ウォン(約8000万円)について差押さえの決定をしていました。

 令和3年9月2日、朝鮮半島出身の労働者は、差押さえ申立を取下げました。

 LSエムトロンが取引していたのは、三菱重工業の孫会社である三菱重工業エンジンシステム、取引をしていたのは農業機械のエンジンだったそうです。

 日本と強制執行手続が同じと仮定すると(韓国は、日本と同一の国でしたから、例外を除いて法律は同じでした。韓国が「魔改造」していない限り同一と考えられます。以下、同じです)、当然の話です。

 この手の話はよくある話で、執行裁判所に、本当に債権があるかどうかわかるわけはありませんし、執行裁判所が、調査する手段もありません。
 第三債務者が債務者に債権を有していない場合、執行不能となりますが、法律家は「空振り」と呼んでいます。よくあることで珍しいことではありません。

 債権者が、執行力のある判決正本等と、第三債務者の登記簿謄本を提出して、差押さえの申立をすれば、裁判所は、形式的な審査をして差押命令を第三債務者に送付します。
 LSエムトロンは、前記のとおり、陳述書で、被差押債権は存在しないと記載して裁判所に提出し、債権差押さえを無視して、三菱重工業エンジンシステムに支払うことも可能ですが、債権者がわからない(不確知)という理由で供託をすることも可能です。

 LSエムトロンは、裁判所に陳述書を提出し、三菱重工業エンジンシステムに支払うことにしました。
  LSエムトロンは、三菱重工業エンジンシステムとの取引を続けたいということですね。

 なお、朝鮮半島出身の労働者は、LSエムトロンの取引先は、三菱重工業エンジンシステムであり、三菱重工ではないということに気づきました。
 しかし、差押さえを放置すると、三菱重工の他の財産が見つかっても差押さえができなくなります。
 取立て不能として、取下げれば、三菱重工の他の財産が見つかれば差押さえができます。

 それだけの話です。
 単なる勘違いということでしょう。

 朝鮮半島出身の労働者の代理人弁護士がミスをしました。
  水原地裁・安養支部にはミスはありません。
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