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雑記帳

住民票除票の保存期間、5年から150年間に

 令和元年6月20日から、住民基本台帳法の一部が改正され、住民票の除票及び戸籍の附票の除票が150年間保存することになりました。令和元年6月19日までは、「除票」と呼ばれる抹消された住民票の保存期間は5年でした。

 ただし、すでに保存期間を経過してしまっているもの(平成26年3月31日以前に消除又は改製したもの)については、発行することができません。

 住民票の除票とは、転出や死亡などによって住民基本台帳から除かれた住民票をいいます。
 戸籍の附票とは、本籍地において戸籍の原本と一緒に保存している書類で、その戸籍ができた時から除籍されるまでの住所の履歴を記録したものです。

 法改正は、所有者不明の土地の増加を受け、持主を見つけやすくする狙いがあります。
 別に、弁護士の仕事をやりやすくする目的ではなさそうです。

 日本の所有者不明地は、平成28年の時点で九州より広い約410万ヘクタールもあると推計されています。
 もちろん価値のある不動産が所有者不明になるはずはなく、ほとんどが価値のない不動産です。
 所有者不明地は、資産価値が低く、管理費や固定資産税の負担を避けて放置されるケースが多いとされます。
 公共事業での用地買収が進まない一因で、政府は対策を検討してきました。

 このため、住民基本台帳法の一部が改正され、住民票の除票及び戸籍の附票の除票が150年間保存されることになりました。

 弁護士にとっても、よかったということになります。

 弁護士が訴状を記載する場合を考えてみます。

 示談交渉なら、依頼者の持参した契約書や登記簿謄本などの住所に郵便を送付します。
 「転居先不明」などで郵便が返送されてきたら、住民票などで、現住所を調べます。

 示談交渉せず訴訟を提起する場合、弁護士にもよるでしょうが、依頼者の持参した契約書や登記簿謄本などをもとに、訴状提出前に、職務上の住民票請求をして、相手の現在の住所を住民票により調べます。
 確認もせずに訴訟などを提起して、「転居先不明」などで郵便が返送されてきたら、裁判所から、嫌みを言われてしまいます。

 職務上の住民票請求をした場合、相手が、書面記載の住所に住んでいるか、同一市区町村区内で転居していれば、現在の住民票上の住所を送付した書面がきますが、他の市町村区に転居して5年以上経過していれば「保管期間経過」で返ってきます。

 転居先が不明となると、弁護士は、昔の住民票などを利用して、戸籍と戸籍の附票を取得することになります。戸籍の附票には、住民票の所在地が記載されています。

 もちろん、本籍地がわかっていることが前提です。
 わからなければ、お手上げです。

 私自身は、消えた年金が問題となったころ(平成20年ころ)、申請用紙を、本籍地の役場から送ってもらい、自分の戸籍と戸籍の附票を、必要があって取ったのですが、当時、平成のはじめころの住所まで残っていました。
 地方公共団体により異なりますが、住民票より長く保管されているようです。

 引っ越しや死亡などで抹消された住民票の保存期間を、現行の5年間から、戸籍と同じ150年間になれば、弁護士は仕事をしやすくなります。
 特に相続が絡む事件の場合そうです。

 ただ、保存期間を経過してしまっているもの(平成26年3月31日以前に消除又は改製したもの)については破棄されてしまっています。

 遺産分割の調停で、平成20年に死亡した被相続人の最後の住所(死亡したとき住民票をおいていた住所)が、住民票の除票や戸籍の附票がとれないということがありました。

 被相続人の最後の住所により、遺産分割調停の管轄が異なります。
 例えば、被相続人の最後の住所が大阪市内なら大阪家庭裁判所に調停を申立てることになりますし、被相続人の最後の住所が堺市内なら大阪家庭裁判所堺支部に調停を申立てることになります。

 被相続人の最後の住所がわからなければ、どの裁判所に調停を申し立てていいかわかりませんね。

 「住民票(除票)の廃棄証明書」という書類が手に入りました。
 ちゃんと記録は残っているのですね。
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