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2023年バックナンバー

雑記帳

ドイツの戦車「レオパルト2」のウクライナへの引渡し

 令和5年1月20日、ドイツのラムシュタイン空軍基地で、ウクライナへの軍事支援に関する会合がありました。およそ50カ国の国防トップがウクライナ支援について協議しました。
 折しも、ロシアは春季攻勢に向けて新たな動員令を準備していると伝えられ、ウクライナ戦争は新局面に突入する形勢です。
 この会合では、主力戦車や長距離ミサイルの大量供与を求める声が上がる一方で、アメリカとドイツは依然、ロシアがNATOの直接的な介入とみることを警戒し、強力な武器の供与に慎重姿勢を取っています。

 イギリスは支援を加速させる方針を打出し、ジェームズ・クレバリー英外相は、令和5年1月17日に行った記者会見で、多くの戦死者を出しているロシアは新たな動員を「必ず行うだろう」「この戦争が延々と長引き、第1次世界大戦のような消耗戦になることをみすみす許すわけにはいかない」「それゆえ今こそウクライナへの支援を増強すべきだ」と述べました。
 ウクライナ政府も西側もウクライナ兵の消耗のひどさに懸念を募らせています。

 ここ数カ月、ドンバス地方の一部であるドネツク州で戦闘が激化しています。
 ウクライナの主力は、ソ連時代の旧式戦車T72です。
 ウクライナ軍は戦車と装甲兵員輸送車を切実に必要としているとみて、ジョン・ウォレス英国防相は、戦車「チャレンジャー2」14台を供与する計画を発表しました。
 西側が現代的な主力戦車をウクライナに供与するのは、これが初めてですが、14台では力不足です。

 ドイツは、史上最強といわれる「レオパルト2」を多数台保有しているほか、NATO加盟国を中心として、ヨーロッパの12を超える国も、ドイツのレオパルト2を多数輸入して保有しています。
 ドイツを含むNATO加盟諸国の保有数は2300台にのぼると推定されています。燃料効率がガソリンより高いディーゼルエンジンを搭載しており、燃料不足に苦しむウクライナのニーズにより適していると考えられています。

 ただ、ドイツの承認がないと、ドイツ以外のNATO加盟国は、ドイツのレオパルト2をウクライナに引き渡せません。
 ロシアと国境を接していて、危機感のあるフィンランドやポーランドやバルト3国は、自国のレオパルト2をウクライナに供与することに前向きですが、ドイツが同意しない限り、供与はできません。

 しかし、ドイツはアメリカの当局者に対して、米国防総省が米軍の主力戦車エイブラムスを供与しない限り、ドイツもレオパルト2を供与するつもりはないと示唆しています。
 しかし、近い将来、アメリカがエイブラムスを供与することはなさそうです。

 ロシアは、令和4年2月に本格的な軍事侵攻を開始して以降占領したウクライナの地域の多くで防衛態勢を強化し始めています。
 さらに後方支援の拠点を、西側諸国がウクライナに供与したロケットシステムの射程範囲よりもずっと後方に移動させて、令和4年秋にハルキウやヘルソンの占領地域をウクライナ軍に奪還された時のように、後方の拠点が攻撃を受ける失敗を繰り返すまいとしている。
 ゼレンスキー大統領が不満を募らせる背景には、ウクライナに約束された軍事支援の到着がどんどん遅れてきていることと、ロシア軍による民間標的への攻撃が激化していることがあります。

 なお、ドイツとしては、ロシアとNATOのが戦争になったとすれば、冒頭記載した ドイツのラムシュタイン空軍基地(ヨーロッパ最大の米軍基地。ドイツの土地であるが米軍が管理。日本でいえば沖縄県の嘉手納基地〈対中国〉、青森県の三沢基地〈対ロシア〉)が、真っ先に攻撃対象になることが予想され、下手をすれば核ミサイルが飛んできかねませんから、勘弁してくれよというのが本音でしょう。
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