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2023年バックナンバー

雑記帳

就労可能年齢

 交通事故で死亡したり後遺障害が残ったとき(14級のむち打ち症など除きます)、逸失利益が認められます。

 死亡による逸失利益とは、もし被害者が生きていたら、将来得ていたはずであったのに死亡したために得られなくなった収入です。
 後遺障害による逸失利益とは、被害者に後遺症が残ってしまったために、将来一定の割合で労働能力が下がってしまうために得られなくなった収入です。
 逸失利益の対象となる稼働可能期間は男女を問わず67歳です。
 ただ、65歳の現役の医師や弁護士や個人事業者などが死亡したり後遺障害が残ったとき、残り2年とはなりません。
 平均余命の2分の1が稼働可能期間となります。
 もちろん、医師や弁護士に限りません。働いて収入があるか、独身者以外が家事をしていれば、平均余命の2分の1が稼働可能期間となります。

 65歳の男性医師や男性弁護士の平均余命は約19年で9年、65歳の女性医師や女性弁護士の平均余命は約24年で12年となります。
 男女に差があるのは不公平な気がしますが仕方がありません。
 通常は、ある程度の年になれば年金のみとなりますが、主婦の家事労働は、現金の収入がなくても認められますから、逸失利益は大きいですね。

 高齢者以外の人の逸失利益の対象となる稼働可能期間は男女を問わず67歳である理由は、昭和50年4月号の別冊判例タイムズ第1号に「稼動就労終了時期を67歳としたのは、昭和44年生命表の0歳男子の平均余命67.74歳によったものである。すべての年齢の者の平均余命が即その年齢の者の就労可能期間とはいえないであろうが、一応0歳のそれを採用した」とあるようです。

 別冊判例タイムズ第1号が発刊されたのが昭和50年(1975年)4月ということは、私が大学2年生の時、私が初めて六法全書を購入したときですから(大学2年の4月から大学4年生の6月、つまり2年余の法律の勉強で司法試験論文試験に合格した計算になります。口述試験は、よほど「あがり症」の人を除いて落ちません)、私が法律を勉強し始めた年からずっと67歳のままであり、途中で変わっていないという私の記憶は正しいようです。

 それを基準とすると、令和4年(2022年)の男性の平均寿命(0歳男子の平均余命)が81.47歳ですから、さしずめ、昭和44年の基準でいくと、81歳までが就労可能期間となります。
 そんなバカなですね。

 ちなみに、韓国の大法院は、平成31年2月11日、従前60歳まで就労可能としていた判例を見直し、65歳まで就労可能という判決をしたそうです。

中央日報・平成31年2月22日付記事

 韓国の大法院は非常識というイメージがありますが、これは妥当な判決のようにみえます。
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