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2023年バックナンバー

雑記帳

日本、EU主導の暫定仲裁制度に参加 WTOの紛争解決機能不全で

 経済産業省は、令和5年3月10日、世界貿易機関(WTO)で加盟国間の通商紛争を解決する機能の不全が続く状況を踏まえ、欧州連合(EU)や中国など有志のWTO加盟国・地域が加入する暫定的な仲裁制度に参加すると発表しました。

 WTOの紛争解決機能が根本的に回復するには時間がかかる公算が大きく、日本も中国などとの間で紛争案件を抱える中、経済界からは参加を要望する声が以前から出ていました。

 日本が参加するのは、EUの主導で令和2年4月に発足した暫定的な仲裁制度「多国間暫定上訴仲裁アレンジメント(MPIA)」です。

 WTOの紛争解決手続きは、第一審の「小委員会(パネル)」と第二審の「上級委員会」の二審制ですが、アメリカは上級委員会のあり方を批判し、裁判官にあたる上級委員の新たな選任や再任を拒み続けています。
 その結果、上級委員は現在ゼロで、審理ができない状態が3年以上も続いています。

 MPIAは、上級委員会の機能停止に対処するための暫定的な代替措置として発足した制度で、当事国が第一審のパネルの判断に不服がある場合に仲裁で解決します。
 これまでにEUや中国、オーストラリア、ニュージーランドなど52カ国・地域が参加した一方、米国や韓国、インドは未参加でした。

 パネルで敗れた当事国が上級委員会に訴えても、現状では上級委員会が機能停止していて審理が進まないため、判断は確定しません。
 それを承知の上であえて上級委員会に訴えることで紛争案件を実質的に塩漬け状態にする「空上訴」と呼ばれる事態がたびたび起きています。
 しかし、通商紛争の相手国がMPIAの枠組みに入っている場合は、紛争解決が進みやすくなります。


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