本文へ移動

2023年バックナンバー

雑記帳

裁判官の再任と定年

 裁判官の定年と再任をご存じでしょうか。

 裁判所法50条には「最高裁判所の裁判官は、年齢70年、高等裁判所、地方裁判所又は家庭裁判所の裁判官は、年齢65年、簡易裁判所の裁判官は、年齢70年に達した時に退官する」となっています。
 原則65歳、最高裁判所と簡易裁判所というトップとボトムが70歳です。

 最高裁判所の裁判官は、調査官という優秀な裁判官に、必要な判例や学説などの調査を依頼し、起案を依頼することができますから、ある程度の年齢でもつとまります。
 ただ、激職であることは間違いないでしょう。特に、弁護士から任官した人で任官中に病死する人がいます。

 簡易裁判所判事は、民事と家事のみ、例えば民事では140万円以下の事件、刑事でも法定刑が軽い事件しか扱わず、民事で訴額が低く、刑事で法定刑が軽くとも、少しでも難しい事件は、地方裁判所に移送して、自分は簡単な事件のみを多数こなせばいいわけですから、70歳でも勤まります。

 次に、再任について説明します。
 下級裁判所の裁判官の任期は10年であり、任期満了後に再任されることができる(憲法80条1項、裁判所法40条3項)。
 現在、ほとんどの裁判官が再任されています。
 裁判官からすれば、10年区切りが来れば、再任願いを出さずにおければ、任期満了退官になり、もっとも、円満に退官することができます。
 どうしても依願退官したいという裁判官を無理に慰留はできませんが、やはり、勤務を続けてほしいといわれているのに依願退官願いをたたきつけるには度胸がいります。
 所属の高等裁判所長官、高等裁判所事務局長に「非公式」に呼びつけられて慰留される裁判官もいます。出張の旅費・手当が出したら、証拠が残りますから「非公式」です。

 逆に、心身の調子が悪くなって裁判官の仕事に耐えられない裁判官、採用はしてみたものの、あるいは、途中から事務処理能力がなっていないことがわかったくらいの裁判官のケースでは、裁判官の身分保障が厚いため、退官させることはできません。
 そこで、10年間という区切りで、再任せずに「整理」していくことが必要となります。
 迷惑がかかるのは、他の裁判官だけでなく、弁護士、検察官、さらには裁判の当事者になったもの全てですから、さっさと辞めてほしいところですが、自分から辞めない以上(辞めると報酬がなくなってしまいます。そんな裁判官が弁護士に転身しても、まともな収入を望むのは無理でしょう)、やむを得ないでしょう。

 なお、高速バスの車内で女性の体を触ったとして準強制わいせつ罪で起訴された裁判官がいましたが、ストーカー罪で有罪判決を受けた裁判官と違い、裁判官弾劾裁判を受けませんでした。
 それは、平成21年4月10日で任期満了がきて、再任届けを撤回していたので、自動的に平成21年4月10日に裁判官の地位を喪失したからです。
 弾劾裁判で有罪判決を受けていないのですから、退職金は満額でますし、年金も、老齢基礎年金を含めて満額受け取れます。
 また、法曹資格も失わず、弁護士になることが理論上はできます(ただし、どこの弁護士単位会も拒絶するのは確実で、弁護士にはなれないと思います)。
 社会的制裁を受けていないということで刑事事件は不利ですが、被害者との示談で執行猶予の判決が出ました。
 ずいぶん違いますね。
 これは、議員に立候補して裁判官の地位を失おうとした裁判官と違い、憲法・法律上自動的に身分を失うわけですから、非難するにはあたりません。
 世の中には運のいい人がいるということです。
TOPへ戻る