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2023年バックナンバー

雑記帳

富裕層らが2.4兆円の大損 悲劇の舞台は「仕組み債」から「永久劣後債」へ

 富裕層にも、いろいろな方がおられます。
 一代で財をなしたという人もいるでしょうし、先祖から都市部の土地を相続しただけという人もいるでしょう。

 富裕層は、富裕層なりの悩みがあるようです。贅沢な悩みですが・・

 証券会社の営業マンから、海外の銀行などが発行するドル建債券をすすめられた人も多いでしょう。

 スイス金融大手クレディ・スイス・グループの永久劣後債は「紙くず」になりました。

 劣後債は発行した企業などが倒産した場合に、弁済する優先順位が普通社債などに比べて劣後する債券です。中でも永久劣後債(AT1債)は、5年後や10年後といった満期の定めがありません。
 そのため、投資家にとってはかなりリスクが高く、その分利回りも相対的に大きいハイリスク・ハイリターンの商品といえます。

 しかし、クレディ・スイスといえば、富裕層でなくとも投資家であれば誰でも耳にしたことがある、世界的な金融グループです。
 安全確実だと思いますよね。
 その債券で10%もの利回りを得られるとあって、多くの富裕層が飛びつくようにして購入したそうです。

 それが一転して、紙くずになってしまったのは、令和5年3月のことです。
 クレディ・スイスは経営不安が一気に高まり、同国金融最大手のUBSグループと株式交換による救済的な買収で合意。さらに、中央銀行のスイス国立銀行から流動性支援(臨時の資金供給)を受けました。

 スイス連邦金融市場監督機構は、クレディ・スイスのAT1債を無価値化すると判断したわけです。
 紙くずになったAT1債の総額は約160億スイスフランで、日本円に換算すると約2.4兆円にも上ります。
 金融庁の調べでは、日本では富裕層を中心に、約1400億円分が販売されていたそうです。2.4兆円で割ると0.6%になります。
 そのうち約950億円分を販売していた、三菱UFJモルガン・スタンレー証券に対しては、金融庁が顧客対応などについて報告するよう命令を出しました。

 証券会社に対する訴訟も検討されています。
 販売していた証券会社が元本削減条項などのリスクについて、どれだけ説明責任を果たしていたかという点です。

 証券会社が作成した契約締結前交付書面には、元本削減条項という欄に「CET1(普通株等ティアワン)比率が7%を下回ったとき」「公的機関による支援を受け入れたとき」という2つの条件が書いてあります。
 今回はこのうちの後者(支援の受け入れ)が原因ですから、書面上は問題がないように見えます。
 「CET1」は説明したかもしれませんが、「公的機関による支援を受け入れたとき」に、ちゃんとした説明をしていたかどうかが問題なのだそうです。

 AT1債で被害を受けた顧客の中には「仕組み債においても、大きな損失を被った人が一定数いる」そうです。
 仕組み債とは、債券と金融派生商品(デリバティブ)取引を組み合わせた金融商品のことで、デリバティブ取引は個別株価や株価指数、為替相場などに連動しており価格変動が大きいことから、債券ではあるもののかなりハイリスクな商品だ。商品設計が複雑なため、投資初心者はリスクの認識が難しいといえます。

 それを地方銀行などが「高利回り商品」などとして販売は、富裕層や高齢者に過剰なリスクを取らせていたことが問題となり、規制が強化されてきた経緯があります。

 その規制の抜け穴として、証券業界で脚光を浴びたのが、まさにAT1債でした。
 そこで大きな悲劇が発生したということのようです。
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