本文へ移動

2023年バックナンバー

雑記帳

相続税の節税を目的とした養子

 平成29年1月31日、最高裁判所は、相続税の節税を目的にした養子縁組が有効かが争われた訴訟の上告審において有効と判断しました。
 今まで、最高裁判所の判決はなかったのかと逆にびっくりしました。

 節税を目的にした養子縁組は結構あるようですね。
 税理士さんは、よくみるのでしょう。
 紛争が起きなければ、弁護士の出番はありません。

 相続税は、相続人が増えれば課税されない基礎控除枠が広がります。
 基礎控除額は、平成26年12月31日以前は、5000万円+1000万円×法定相続人の数でしたが、現在は、3600万円+600万円×法定相続人数と変更になっています。
 また、生命保険も、相続人が受取人になっていれば、現在、500万円×法定相続人数までは非課税です。
 それなら、法定相続人を増やせばよいと誰でも考えつきます。

 ただ、相続税法上、法定相続人の中に養子がいる場合、法定相続人の数に含める養子の数は、実子がいるときは1人、実子がいないときは2人が限度になります。
 生命保険なしと考えると、1人法定相続人が増えるごとに、600万円の控除が増えるだけです。
 知れてますね。

 弁護士がよくみかけるのは、ある法定相続人の遺留分を減らすために、子の数を増やすというのがあります。
ある親がいて、長男と二男がいる場合、二男に一切相続させたくないと思って、長男にすべて相続させると遺言をしても、二男の法定相続分は2分の1、その半分の4分の1は、二男に遺留分がありますから、遺留分減殺通の意思表示をすると、遺産の4分の1は二男にいってしまいます。
 長男に子が2人いるとして、長男の子2人を親(子にとっては祖父母)の養子にすれば、子は4人に増えます。
 二男の法定相続分は4分の1となり、その半分の8分の1しか二男に遺留分はなくなります。
 ここまでいくと「親がそこまでするか」ということになりますが、たいていは、親ではなくて、長男が親を操っていることもあります。

 なお、本当のお金持ちは、あまり弁護士を立ててまで争いはしません。
 相続税法には、相続税の負担を軽くするために、相続税を優遇する制度がいくつかあります。
 この相続税を優遇する制度の中には、相続税の申告期限までに遺産分割が終了し、相続税の申告書を提出することを条件としているものがあります。
 遺産分割が相続税の申告期限までにまとまらない場合、この相続税を優遇する制度を利用することができないことがあります。
 ですから、弁護士に委任してはいるものの、相続税もかからない金額での遺産分割の紛争は結構あります。

 案外、弁護士は、多くの相続事件ではもうからないものです。
 ただ、大きい事件を扱うと、その事件だけで、その年の経費くらいの報酬になることもあります。 
TOPへ戻る