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2023年バックナンバー

雑記帳

多数弁護士の法律事務所

 多数弁護士連名の訴状というコラムを書いたことがあります。

 大阪にも、比較的規模の大きい事務所が増えてきました。

 被告事件で、相談者・依頼者が、原告代理人として数名、場合によっては十数名の記載された訴状をもってきて「相手は、これだけたくさんの弁護士をつけてきた」と大騒ぎすることがあります。
 この点は、同じ事務所所在地の弁護士が何人いても意味はありません。
 基本的に、1件について、担当する弁護士は1名だけです。訴状に「主任」とか「担当」とか書いてあります。
 他の弁護士は名前が挙がっているだけ、事件の中身も知らないことがほとんどです。
 訴状はともかく、次の準備書面から、弁護士の名前が1人になることも結構あります。

 話は変わって、民事裁判の当事者や代理人弁護士が出席した際に記入する「出頭カード」に、東京弁護士会の若手弁護士が他の弁護士の名前を記載したケースが、東京地方裁判所で平成28年3月以降3件あったそうです。

 東京弁護士会によると、代理人としての委任状を忘れた弁護士が、委任された別の弁護士名をカードに記入したり、所属する弁護士法人の代表者名がカードに印字されていたために、この代表者名にチェックを入れたりしていました。
 3件とも、直後に地方裁判所が気づいたそうです。
 というか、普通は、事件になったのは氷山の一角、3件が発覚したということですね。

 東京弁護士会は、出頭カード通りに裁判記録が作られれば虚偽の記録になることから、「不正行為は弁護士の信頼を損なう」として平成28年9月に緊急の会長談話を出し、注意を呼びかけ、別の弁護士名を記入した弁護士については、懲戒処分を受けています。

 平成28年12月5日付での東京弁護士会の懲戒委員会による懲戒内容です。

 「被懲戒者は、東京地方裁判所に係属する事件(以下「本件事件」という)の原告25名のうちの1名の代理人に選任され、さらに原告24名の訴訟複代理人として、2015年9月に開催された本件事件の第1回口頭弁論期日に出頭することになっていたが、同期日において24名から受任した当時同じ事務所に所属していた弁護士氏名を自署したうえ、その記載をマルで囲み、その代理人弁護士であると装って訴訟行為をした。」
 「かかる行為は弁護士職務基本規定第74条、同規定第6条に違反し、弁護士法第56条第1項に定める弁護士の品位を失うべき非行にあたる。」

 いきなり業務停止1年はきついですね。
 口頭弁論期日調書には、出頭した当事者・代理人の記載があります。
 裁判官のときは、裁判官が口頭弁論調書をチェックして、認印を押さなければならないので、出勤日は毎日のようにみていましたが、弁護士になってからはあまりみません。
 裁判官から釈明があったときとか、この部分は調書にとるという話があったときだけ、口頭弁論調書の謄写をします。
 何もないのに1枚45円の謄写料は無駄です。

 複数人の法律事務所で、訴状や準備書面に知らないうちに名前が記載されているというのはよくあることです。
 ただ、口頭弁論には出頭しないのが普通です。
 口頭弁論調書に出頭と記載されていれば出頭していることになります。 
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