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2023年バックナンバー

雑記帳

十徳ナイフを繁華街で携帯は犯罪か

 軽犯罪法に、以下のとおり定められています。
一条 左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
 二項 正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者

 登山やキャンプや海外旅行に持って行く、ナイフやドライバー、瓶やワインの栓抜きなど多種多様な機能を備えた「十徳ナイフ」(Army Knife。multi-tool knife。多いのは、スイスのビクトリノックス VICTORINOX製 )を、明確な目的なく繁華街で携帯していたことは軽犯罪法に該当するのでしょうか。

 大阪市で鮮魚店を営む男性(48)は、令和3年12月、JR大阪環状線の福島駅近くの交差点を、赤信号を無視して徒歩にて横断し職務質問を受けました。
 その際パトカー内での所持品検査で、かばんの外ポケットの中から十徳ナイフが見つかりました。外ポケットはチャックで閉じられていました。

 男性は軽犯罪法違反の罪で略式起訴されました。
 「正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者」に該当しそうです。

 争点は、仕事や日常生活での必要性を踏まえ「社会通念上相当」と認められるか否かです。
 男性側は「隠すという積極的意思はなかった」「災害時や普段の生活・仕事において、何か道具が必要な際に持っていたら便利だと思ったから携帯していた」と主張しました。

 1審の大阪簡易裁判所は今年1月、「チャックを閉じて外ポケットの中に入れていたことから、隠していたことは明らか」「事件当日までのかなりの間、十徳ナイフを使用しておらず、使用が現実的に想定されるような状況にはなかった」などと指摘して、科料の有罪判決をしました。
 男性の十徳ナイフ携帯は「社会通念上相当とは認められず正当な理由がない」と断じ、科料9900円の有罪判決を言い渡しました。
 男性はこれを不服として控訴しました。

 男性は「1審判決を踏まえれば、アウトドアや出張・旅行の際に十徳ナイフを携帯しているものの、実際に使用しない可能性もある場合、違法になるのではないかという懸念を一般市民が抱く。軽犯罪法濫用防止の見地からも不当である」と無罪を主張しました。

 検察側は「自宅や職場の近くの繁華街を通行するだけの際に持ち歩くことに、社会的合意があるとは言えない」「女性が深夜人気のない道を帰宅途中、後ろからついてくる男性が十徳ナイフを携帯しているのが当たり前な社会には、不安しかない」などと控訴棄却を求めました。

 大阪高裁は、令和5年8月1日、「これといった必要性もないのに、漠然とした目的で十徳ナイフを常時隠匿携帯することが許されるというのは、犯罪を未然に防止するために危険性のある器具の携帯を制限している軽犯罪法の趣旨からみても、相当とは言えない」「自宅や職場から持ち出して携帯する必要性はなかった」などとして、1審の簡裁判決を全面的に支持。男性の控訴を棄却しました。
 男性は最高裁に上告する方針です。 

 私も、スイスのビクトリノックス VICTORINOX製の多目的ナイフを持っていますが、海外旅行用のスーツケースに入れたままです。
 あまり、持ち歩くことはありません。


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