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2023年バックナンバー

雑記帳

ドイツ憲法裁判所 コロナ対策予算、転用は違憲

 ドイツの憲法裁判所は、令和5年11月15日、新型コロナウイルス対策予算の600億ユーロ(約9兆8000億円)を気候変動対策に振替えた、政府の措置は基本法(Grundgesetz。日本の憲法に相当)違反との判決を下しました。
ドイツの憲法裁判所は紛争性を要件としません。1審かつ終審です。

 ショルツ政権は財政計画の修正を迫られ、政権運営にも影響します。

 財政規律を重視するドイツの基本法は、財政赤字を国内総生産(GDP)の0.35%までに制限する「債務ブレーキ」を規定しています。
 コロナ禍は非常事態に当たり適用せず、令和3年度予算は借入れを600億ユーロ増額しました。
 しかし、借入分を会計年度中に使わなかったため、ショルツ政権は、気候変動対策の基金に回す修正案を提案し、連邦議会で可決され、次年度以降に使える資金になっていました。

 ドイツは新たな予算支出を全面的に凍結しました。
 連邦憲法裁判所による衝撃的な判決が引き起こした財政危機の深刻さを物語っています。
 当局者らによると、ドイツがウクライナに約束した令和6年の軍事支援80億ユーロ(約1兆3000億円)にも影響が生じます。

 その後、ドイツのショルツ政権は、令和5年12月13日、来年度予算案について合意したと表明しました。
 ドイツの経済成長と環境への移行を妨げる可能性があるとの指摘がある中で、新規借り入れを制限する「債務ブレーキ」を停止しないことで同意しました。

 予算を巡る協議は、連立を組む、ショルツ首相のSPD、緑の党、FDPの間において、
数週間にわたって緊迫した状態が続いたため、連立政権存続が危ぶまれていましたが、連立政権を構成する財政タカ派の自由民主党(FDP)が望む緊縮財政の道のりを歩むことで合意しました。
 ただ、中道左派の社会民主党(SPD)のショルツ首相は、ウクライナに対する追加支援が必要な場合、債務ブレーキは再び停止される可能性があると述べました。

 ショルツ首相は、リントナー財務相(FDP)およびハーベック経済相(緑の党)との記者会見で「政府は目標を堅持する。しかし、われわれはより少ない資金でそれを達成しなければならない。それは削減と節約を意味する」と指摘したうえ、「気候に悪影響を与える補助金を廃止し、個々の部門の歳出を若干削減し、連邦補助金を削減することでこれを実現する」と述べました。

 また、新型コロナ対策予算の未使用金の転用が認められなかったことを受け、ドイツの気候中立への転換推進に適した投資や対策を促進する「気候・変革基金」への予算が20令和6年に120億ユーロ削減されると表明し、令和9年までの削減額は450億ユーロに達するとしました。
 同基金の総額はなお1600億ユーロに上っています。

 今回の合意にかかわらず、連邦議会(下院)が年内に令和6年度予算を決定できないことはすでに明確になっていて、令和6年1月1日からは暫定的な予算管理が行われます。

 コメルツ銀行のチーフエコノミストは、政府が債務ブレーキを停止しようとしていないことは歓迎するが、財政健全化策により来年の成長が最大0.5%ポイント鈍化する可能性があると指摘しています。
 ドイツ経済研究所(DIW)の所長は、今回の合意は「連邦政府が問題を将来に先送りしただけの腐った妥協」としています。
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