本文へ移動

2015年~2017年バックナンバー

仏像の盗難

 2年ほど前に「日本からの盗難仏像と韓国の裁判所」というエントリーを書いています。

 韓国・大田地方裁判所は、平成25年2月26日、平成24年10月に長崎県対馬の観音寺から盗まれ、韓国で見つかった仏像2体のうちの1体について、返還を差止める内容の仮処分決定を出したという報道がありました。

 問題の仏像は、対馬市豊玉町所在の観音寺が所蔵していた、長崎県指定有形文化財の「観世音菩薩坐像」(右の写真)です。
 韓国の窃盗団に盗取され行方不明になっていたのですが、窃盗団の摘発により、所在がわかりました。

 韓国の浮石寺が、当該仏像は、14世紀に和冦の時代に略奪されたものだと主張して、保管している韓国政府に移転禁止を求める仮処分を申請していました。
 韓国・大田地方裁判所は、「観音寺は(菩薩坐像を)正当に取得したことを訴訟で確定させなければならない」などと判示したそうです。
 観世音菩薩坐像は現在、韓国・大田市内の国立文化財研究所に保管されたままで、永遠に返還しないということになってしまいます


 「文化庁・文化財の不法な輸出入等の規制について」をご覧ください。

 文化財返還と関連しては昭和45年にユネスコで決議された「文化財不法搬出入と所有権譲渡禁止と予防に関する協約」が代表的な国際条約です。昭和47年から発効し、批准をした国に適用があります。
(1)他の締約国の博物館等から盗取された文化財(所蔵品目録に属することが証明されたものに限る)の輸入を禁止する。
(2)原産国である締約国の要請により、(1)の文化財の回復及び返還について適当な措置をとる。

 簡単にいえば、入国が盗難にあったと指定した文化財が、別の加入国で発見された場合、その発見された加入国は持ち主である加入国へ返還するものとする内容です。

 なお、この条約は遡及適用を禁じていますから、双方の国が、批准する以前の盗難については適用されず、盗まれた国は、条約に基づいて、相手国に返還を求めることができません。

 日本は、国内法との整合性の観点から、相当遅く、平成14年に批准しています。韓国はそれ以前に批准しています。

 日本と韓国の間に限っていえば、平成14年以降の文化財の盗難については、文化財を盗取された国は相手国に返還を請求できますが、平成14年以前の文化財の盗難については、文化財を盗取された国は、条約に基づいて、相手国に返還を請求できません。

 ですから、平成14年を境として、平成24年10月に長崎県対馬の観音寺から盗まれ、韓国で見つかった「観世音菩薩坐像」については、日本は韓国に返還請求できますが、韓国は日本に対し、14世紀に「和冦の時代に略奪された」から返還請求はできません。
 もちろん、「観世音菩薩坐像」が14世紀に和冦の時代に略奪されたというのはあくまで勝手な想像です。


 また、「日韓基本条約の関係諸協定、文化財及び文化協力に関する日本国と大韓民国との間の協定」もあります。

 昭和40年に締結された日韓基本条約と一緒に締結された協定で、「日本国政府は、附属書に掲げる文化財を両国政府間で合意する手続に従つてこの協定の効力発生後六箇月以内に大韓民国政府に対して引き渡すものとする」としていて、日本は、日本は韓国に、該当する文化財を引渡しています。
 それ以外のものは、日韓基本条約で、互いに請求権の放棄をし、最終的な解決をしています。


 それとは別に、韓国が「日本が仏像を盗んだ」と決めつけるのは、一般的な日本人の仏像への感覚とずれていますね。

 日本人は、仏像などを盗めば、「悪いことをすれば罰が当たる」と考えますね。
 仏像=仏様を盗むなどということは日本人の感覚からすれば、「罰当たり」で、恐ろしくてできなません。


 平成26年11月25日、韓国人の窃盗団が、対馬の寺から「誕生仏」(左の写真)を盗み、出国手前で逮捕されました。
 「金になるから」盗んだということですが、「仏罰」ということは考えないのでしょうね。
 韓国には、日本ほど、仏教徒はいません。
TOPへ戻る