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ドイツの脱原子力発電
福島第1原子力発電事故を受け、メルケル政権は、平成34年までに、原子力発電を段階的に停止し、再生可能エネルギーを拡充する政策へと転換しました。
メルケル首相は「(脱原子力発電は)長年原子力の平和利用を支持してきた人間による、政治的な判断だった」と述べ、自らが物理学者として抱いていた原子力発電の安全性に対する考えが揺らいだことを明かしました。
メルケル首相は博士号をもっています。
しかし、法学博士や経済学博士ではなく、政治家として異例な物理学博士です。
ライプツィヒ大学で、1986年のことです。
平成25年時点での現在の総発電量に占めるエネルギー別の発電割合は、以下のとおりです。
石炭・褐炭45.2%
風力、太陽光など再生可能エネルギー23.9%、
原子力15.4%。
「脱原子力発電」により、原子力分の穴埋め用エネルギー源として地球温暖化の一因とされる二酸化炭素(CO2)を排出する石炭や褐炭(水分や不純物が多く低品質の石炭)への依存が進んでいます。
もともと、ドイツは、石炭・褐炭発電がさかんでした。
ドイツでは、平成26年から2年の間に10基の石炭火力発電所が建設される予定です。
また、ドイツでは、再生可能エネルギーの電気は、どれだけ余っていようが、すべて買い上げられることになっています。
その買取り値段は20年にわたって決められているので(平成12年に法律で定められました)、生産過剰でも発電は止まりません。
これが、電気代の高騰となり、産業や家計を圧迫しています。
さらに、風力発電による電気は、風力の豊富な北部から、自動車産業など製造業の集積がある南部に向けて送電されなければ成りません。
「電力のアウトバーン」と呼ばれる送電網を築く必要があるのですが、高圧線の敷設による景観阻害や地価の下落、健康への影響などを心配し、反対を唱える人が少なくありません。
ということで、送電線の建設ができていませんから、必要なところに、必要な電気が供給されているわけではありません。
そう簡単にはいかないようです。