2015年~2017年バックナンバー
弁護士の懲戒
日本弁護士連合会のまとめでは、平成26年の全国の弁護士の懲戒処分件数は101件で、統計を取り始めた昭和25年以降、初めて100件を超えて最多となり、処分で最も重い「除名」も6件で過去最悪となったそうです。
「除名」「退会命令」「業務停止」「戒告」との順で軽くなります。
除名」「退会命令」は、実質的な死刑宣告で、「業務停止」を受けるとまともな仕事はできません。「戒告」は、名前がさらされるだけのことです。
平成26年の除名事例は、男性弁護士(70)が預かり金1000万円超を着服(長野弁護士会)、男性弁護士(56)が預かり金1億5000万を着服(第二東京弁護士会)、男性弁護士(78)が預かり金800万円を着服(広島弁護士会)、男性弁護士(58)が公文書を偽造(広島弁護士会)などだったそうです。
除名となると、預かり金の横領が多いですね。
また「禁錮以上の刑に処せられた者」「破産者」となると、自動的に、弁護士資格を失いますから、弁護士会の処分の必要はありません。
それを含めると、もっと多くの弁護士が資格を失っていることになります。
昔は、預かり金の横領といえば、投機の失敗(先物、借金をしての居住用以外の不動産の購入)などが多かったですが、現在は「運転資金」に困って預かり金の横領におよぶ弁護士が多いようです。
司法制度改革は弁護士需要の高まりを見越したものでしたが、仕事はむしろ減っています。
最高裁判所の司法統計よりますと、全国の裁判所が受理した事件数は平成15年が610万件でしたが、減少傾向が続いて平成25年は360万件にまで減少したそうです。
そのうち民事・行政事件は350万件から150万件に、刑事事件も160万件から100万件にそれぞれ減っています。
一方、弁護士数は、法曹人口の充実を柱の一つとした司法制度改革を受けて、平成15年から平成25年までの間に1万7000人から2万9000人に増加しています。
平成26年の弁護士数は3万5000人で、平成12年比で倍増しています。
弁護士が、経済的に困窮するようになるのは当たり前ということになりますね。
また、大きな事件は、特定の弁護士に偏る傾向にあり、昔は、それでもまともに仕事をしていれば「食べていけ」ましたが、現在は、まともに仕事をしようにも仕事が来ない弁護士が増加しています。
若い弁護士だけが大変というわけではありません。
日本弁護士連合会の高中副会長は、預かり金着服が多くなっている背景について「昔は預かり金に手をつけてしまった弁護士でも、仕事が多かったので報酬で穴埋めでき、発覚しづらかった」と指摘し、さらに「弁護士は難関の司法試験に合格したというプライドが強い一方で、競争社会に慣れていない。弁護士には定年がないので、いつまでたっても仕事が来ると勘違いし、老後資金を蓄えない弁護士も多い。そうした中で生活費や事務所維持費が不足して、不正を働いていまう」と分析しています。
高中日本弁護士連合会副会長は、不祥事根絶対策として「仕事が来なくなったら競争社会に負けたということ。その場合は潔く事務所を閉めて引退するなど、エリート意識を捨てることが必要だ。ハッピーリタイアできるよう、若いうちから老後資金をためておくよう意識改革を促すこともひいては不祥事対策につながるだろう」との考えを示しています。
高中副会長は「遠慮がち」に述べています。
60代、70代だけではなく、30代、40代、50代でも「仕事が来なくなったら競争社会に負けたということ。その場合は潔く事務所を閉めて引退するなど、エリート意識を捨てることが必要だ」ということだと思います。
依頼者の預かり金に手をつけるくらいなら・・
極貧でも、悪いことをせず頑張るなら、弁護士を続けて問題ありません。
でも、事業所得が不調で、生活費を出すと赤字と言うことが続けば、配偶者に十分な稼ぎがあるとか、家が資産家だとか、蓄えが十分あるとかということでもなければ「仕事が来なくなったら競争社会に負けた」として、返済できなくなるまで借金がふえる前に潔く辞めるのが賢明かもしれません。
私は、他の弁護士さんにだけ「無責任な」ことはいいません。
私も、まだ59歳ですが「仕事が来なくなったら競争社会に負けた」として、潔く引退します。
周りからは「ハッピーリタイア」に見えるかもしれませんが・・・