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2015年~2017年バックナンバー

ユーロ高

 ユーロが、対円(平成29年7月11日・131円)だけではなく、対ドル(平成29年7月11日・1.14ドル)に対しても高くなっています。
 
 ヨーロッパの長期金利上昇がユーロ高の原因の1ついです。
 
 主役はドラギ・ヨーロッパ中央銀行(ECB)総裁(イタリア人)です。
ドラギ総裁は、平成29年6月27日、金融の量的緩和の出口を示唆しました。
 
 ユーロは主要通貨のなかで独歩高となりました。
 
 ただ、裏には、ドイツのメルケル首相がいます。
 
 平成29年5月22日、メルケル首相は「ユーロは弱すぎる」と認め、金融を緩和している「ECBの政策」を挙げました。
 
 ユーロ安の結果として、「ドイツの製品が相対的に割安になっている」と語り、ドイツの貿易黒字を膨らませているとの認識を示しました。
 
 メルケル首相は、ユーロ高の容認を掲げていることになります。
 
 メルケル首相はアメリカを意識しています。
 トランプ政権は、ドイツの貿易黒字なかでも対アメリカ黒字を厳しく批判し、その背景としてユーロ安を指摘してきました。
 
 ユーロは、経済状態のよい国(ドイツ、オランダ、ルクセンブルク)と、経済状態の悪い国(ギリシャ、イタリア、スペイン、ポルトガル)、相対的に経済状態の悪い国(フランス)の共通通貨です。
 
 共通通貨でなければ、ドイツ・マルク、オランダ・ギルダー、ルクセンブルク・フランは、輸出が好調ですから通貨が切りあがり、輸出増加に歯止めがかかります。
 また、共通通貨でなければ、ギリシャ・ドラクマ、イタリア・リラ、スペイン・ペセタ、ポルトガル・エスクードは、経済状態が危機的ですから、通貨が切りさがり、輸出が増加して、経済状態がよくなります。
 
 単一通貨ですから、通貨高や通貨安による調整は不可能で、ドイツ、オランダ、ルクセンブルクなどは、ギリシャ、イタリア、スペイン、ポルトガルなどを踏み台にして輸出をのばしています。
 
 ドイツ、オランダ、ルクセンブルクなどといっても、オランダ、ルクセンブルクは小国に過ぎませんから、ドイツだけがやたら目立ちます。
 「ドイツ1強」という言葉は、これをさしています。
 
 現在、ユーロ高にすると、一番痛い目にあうのはイタリアです。ギリシャは、どうにもなりません。
 イタリアの銀行の不良債権問題が課題でした。
 ドイツはイタリア当局による公的資金注入に厳しい条件を付けていたのですが、その条件を緩めることでイタリアの銀行再編を促すようにしました。
 
 イタリアの金融不安の鎮静にメドが立ったこともあり、ドラギ総裁は大規模緩和の出口を示唆しました。
 
 その結果、ドイツなどの長期金利が上昇し、ユーロ高が進んだということがいえます。

 アメリカの貿易赤字相手国(2018年)では、1位の中国が3470億ドル、2位の日本は689億ドル、3位のドイツは649億ドル、4位のメキシコは632億ドルです。
 
 メルケル首相のユーロ高容認は、アメリカに借りをつくらないためといわれています。
 
 G20首脳会議では、メルケル首相が最優先課題とした地球温暖化の問題や保護貿易に対する反対で、トランプ氏に対し全く譲ろうとしませんでした。
 
 スイスフランはユーロに連動していますから、対円でかなり高くなっていて、今年の夏にヨーロッパ旅行をする人は大変ですね。
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