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身近な法律問題

裁判は遅い?

公事三年という言葉があります。
 この場合の「公事」は「訴訟」のことです。

 また、前首相(平成19年7月9日現在)の口ぐせに「思い出の 事件を裁く 最高裁」という川柳がありました。

 外国の法諺には"Justice delayed , justice denied."(裁判の遅延は正義の否定)というものもあります。


 日本の裁判は遅いのでしょうか

 確かに、昔は、示談交渉のうちは早いのですが、争いのある訴訟になると(強制執行するため、あるいは、時効を中断するための「争いのない」「訴訟」もあります。おそらく、第1審では、半数以上の訴訟が「争いのない」「訴訟」だと思います)、原告訴訟代理人が訴状を出して、口頭弁論期日当日に被告の答弁書が出され、次の口頭弁論期日に原告の準備書面が提出され、これを延々と繰り返したうえ、争点整理が不十分なまま本人・証人尋問に入り、本人・証人尋問なども、主尋問で1期日終わり、反対尋問は、調書を読んでからゆっくりと、といった調子で、延々続いていました。
 いわゆる「五月雨式裁判」と呼ばれるものです。

 依頼者から「裁判をすると長くかかるでしょうね」という問いに対し、弁護士が「この件はそんなに長くかかりませんよ。せいぜい1年か2年でしょう」と答え、依頼者が絶句する状態でした。
 一般の人の常識と、法律家の常識が、ずいぶん食い違っていたと思います。


 もっとも、「裁判にも納期がある」という前提で、平成10年に民事訴訟法改正がなされました。
 「争点のしぼり込み」「集中証拠調べ」、また、一歩進めた「計画審理」によって、比較的容易な裁判は、見違えるように早くなりました。
 外国からの「圧力」や、経済界からの「圧力」があったようです。

 弁護士としても、期日の準備に追われて「きつい」ところですが、基本的に、弁護士の着手金・報酬は、長くかかっても短い期間ですんでも同額ですから、「回転が速くなれば」「利益率がよくなる」ということで、私などは、個人的に大歓迎です。


 ただ、処理を急ぐあまり、「一丁上がり」的な判決が増えたということは否めません。

 丁寧に判断されている裁判なら、たとえ負けたとしても、依頼者本人を説得して控訴をしないという選択もあるのですが、「一丁上がり」的な判決だと、依頼者本人の説得が難しく「控訴審でやりますか」ということになってしまいます。

 証拠をずらっと並べ、「以上の証拠によれば、以下の事実が認められ、これに反する証拠は信用できない」として、ずらっと認定事実をならべて、はい「結論」では、納得しようにも納得できません。
 控訴をするにも大変です。判決が導き出された過程がわかりませんから、結局、一審の最終準備書面をコピーし、「原告」を「控訴人」、「被告」を「被控訴人」と「置換」しただけの控訴理由書しか書けないことになります。

 控訴審で文句を言われても、書けないものは書けません。
 ちゃんと結論が導き出される過程が記載されていれば、判決の「おかしい」という点を絞れるのですが、どのようにして結論を導いたのかわからなければ、同じ事を繰り返すしかありません。


 弁護士になってみると、裁判官の個々の能力に、大きな違いがあるということを思い知らされます。
 結局「できる人はできる」「できない人はできない」ということで、「運がいい」「運が悪い」であきらめるしかありません。

 もっとも、大阪のように民事の裁判官だけでも、優に100人をこえる場合なら、どの裁判官に当たるのかは「運がいい」「運が悪い」と割り切ることも可能ですが、地方や支部のように、裁判官が数人という裁判所で活動する弁護士は、「すか」が1人入ると「大問題」になるそうです。「すか」が2人入ったら「死活問題」だそうです。


 ちなみに、日本の民事裁判は、なんだかんだ言っても、先進国中では、最も「丁寧」な部類にはいると思います。
 少なくとも、ドイツよりは丁寧です。
 フランス留学をした方にうかがうと、やはり、フランスの方が荒っぽいそうです。
 陪審員の入る英米ではどうでしょう。「ラフジャスティス」の典型なのかもしれません。
 もっとも、日本の民事裁判は、他の先進国より「遅い」ことも間違いないでしょう。


「迅速」と「丁寧」は、まさに「トレードオフ」、「あちらを立てればこちらが立たず」という関係にあるようです。

 皆さんは、「迅速」あるいは「丁寧」どちらを重視しますか。
 「迅速」かつ「丁寧」?
 夢物語です。

西野法律事務所
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