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身近な法律問題

法廷の秩序維持

裁判官は、自分が見聞きした事件について裁判することができるでしょうか。

 民事訴訟法23条には裁判官の除斥自由が列挙されています。
「 裁判官は、次に掲げる場合には、その職務の執行から除斥される。ただし、第6号に掲げる場合にあっては、他の裁判所の嘱託により受託裁判官としてその職務を行うことを妨げない。
1 裁判官又はその配偶者若しくは配偶者であった者が、事件の当事者であるとき、又は事件について当事者と共同権利者、共同義務者若しくは償還義務者の関係にあるとき。
2 裁判官が当事者の4親等内の血族、3親等内の姻族若しくは同居の親族であるとき、又はあったとき。
3 裁判官が当事者の後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人であるとき。
4 裁判官が事件について証人又は鑑定人となったとき。
5 裁判官が事件について当事者の代理人又は補佐人であるとき、又はあったとき。
6 裁判官が事件について仲裁判断に関与し、又は不服を申し立てられた前審の裁判に関与したとき」

 4号に「裁判官が事件について証人となったとき」とありますから、裁判官は、自分自身が見聞きした事件について裁判することができないことになります。

 自分が証人になって、自分が裁判をするのでは、いくら裁判官が「中立・公平」といっても、公正さを疑われることになります。

 唯一例外があります。「法廷等の秩序維持に関する法律」です。

「1条  この法律は、民主社会における法の権威を確保するため、法廷等の秩序を維持し、裁判の威信を保持することを目的とする。
2条
 1項 裁判所又は裁判官(以下「裁判所」という)が法廷又は法廷外で事件につき審判その他の手続をするに際し、その面前その他直接に知ることができる場所で、秩序を維持するため裁判所が命じた事項を行わず若しくは執つた措置に従わず、又は暴言、暴行、けん騒その他不穏当な言動で裁判所の職務の執行を妨害し若しくは裁判の威信を著しく害した者は、20日以下の監置若しくは3万円以下の過料に処し、又はこれを併科する。
 2項  監置は、監置場に留置する。
3条
 1項  前条第1項の規定による制裁は、裁判所が科する。
 2項  前条1項にあたる行為があつたときは、裁判所は、その場で直ちに、裁判所職員又は警察官に行為者を拘束させることができる。この場合において、拘束の時から24時間以内に監置に処する裁判がなされないときは、裁判所は、直ちにその拘束を解かなければならない。
4条
 1項  制裁を科する裁判は、決定でする。
 2項  前項の裁判は、第2条1項にあたる行為が終つた時から1箇月を経過した後は、することができない。
 3項  裁判所は、裁判をするについて必要があるときは、証人尋問その他の証拠調べをすることができる。この場合においては、その性質に反しない限り、民事訴訟法 (平成8年法律第109号)による証拠調べの場合の例による。
 4項  制裁を科する裁判をしたときは、手続に要した費用の全部又は一部を本人に負担させることができる」

 法廷秩序の維持は、合議体としての裁判所(あるいは単独裁判官)があたります。
 原則からすると、裁判官は、自分が見聞きした事件について裁判できません。
 しかし、合議体としての裁判所(あるいは単独裁判官)「法廷又は法廷外で事件につき審判その他の手続をするに際し、その面前その他直接に知ることができる場所で、秩序を維持するため裁判所が命じた事項を行わず若しくは執つた措置に従わず、又は暴言、暴行、けん騒その他不穏当な言動で裁判所の職務の執行を妨害し若しくは裁判の威信を著しく害した者」の処罰ができることになっています。

 まさに現行犯であること、緊急性のあること、法廷という秩序が重んじられる場での犯罪であること、裁判官に公正の信頼が厚いことなどの理由による例外です。

 昔は「荒れる法廷」などといって、よく適用されたそうです。
 私自身、裁判官1年目に、合議体の一員として、看守の手錠を、別の被告人に対し投げつけた被告人を監置処分にしたことがあります。
 秋口でしたが、大阪地方裁判所・昭和55年(秩ろ)第1号という事件番号がついていました。そのときまでに、大阪地方裁判所で、1件もなかったということになりますね。

 弁護士になってから、見たことも聞いたこともありません。

西野法律事務所
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